飲食業界は、わずかの利益を積み上げることがビジネス成功の法則とされている。この考え方は当然、労務コストにも向けられており、気が付くと、法に触れる行為をしてしまっているケースは枚挙にいとまがない。今回は、『外食ビジネス 人材活用15のポイント』(同友館)を紹介したい。著者は人材のスペシャリストとして活動する中武篤史さん。
外国人も貴重な戦力になる
会社が保険料を払う必要がなく、コストパフォーマンスが高いパートタイマー、イコールが学生である。しかし、少子化の波は大きく、学生そのものの数が減っていて、今や学生アルバイトは採用にずらい状況。果たしてどうすべきか?
「このように労働人口が不足している現在、それなら、いったいどこに労働力を求めたらよいでしょうか。現在の人口減少社会から脱却できない限り、今もっとも活用すべきなのは、時間にたっぷり余裕がある高齢者か、急増中の外国人と言えます。会社としては、このどちらかの雇用を検討する必要がありそうです。」(中武さん)
「特に、最近コンビニや飲食業などで、よく外国人のパートタイマーを見かけるようになっていますが、外国人を採用する場合には、いろいろと細かいルールがありますから、事前にしっかりと調べておくことが大切です。とりわけ“在留資格”、”在留期限”を必ず確認し雇用することが可能な資格(留学生、ワーキングホリデーほか)なのか、滞在できる期限が切れていないかなど、十分にチェックをしないといけません。」(同)
雇用するのが留学生の場合には、大学生なら週28時間以内というように、就労可能な時間制限がある。ちゃんと確認しておく必要がありそうだ。
「『ちょっとくらいオーバーしても大丈夫』などと安易に残業をさせると不法就労になってしまい会社が処罰を受ける可能性があります。また、外国人を雇用するとき、雇用をやめるときには、それぞれハローワークに届けないといけません。うっかり忘れてしまったなどということがないように、くれぐれも気をつけてください。」(中武さん)
「外国人を採用する場合は、日本人を採用する場合にはないルールや手続きがありますから、それらを知っておくことが何よりも重要です。ルールを守らないと、罰則が科せられることになります。『うっかりしていた。そんなこと知らなかった』というだけで、ブラック企業の烙印を押されかねません。」(同)
日本の常識は世界の非常識
外国人の活用はきちんとルールを知り、そのルールを守った上で採用することが必要。しっかり働いてもらえば、不足する人員を補うのに十分な労働力が確保できる。しかし、日本の常識がスタンダードではないので、その点も留意ポイントである。新しい外国人のアルバイトに来てもらうことになり、朝10時からと決めてあったとする。10時には仕事開始になるがまだ来ない。10時半過ぎにようやく登場。店長が注意すると「だって11時になっていません」とアルバイト。アルバイトは「10時ジャスト」を「10時~11時頃」とゆるやかに勝手に解釈していたなんてこともある。
日本人の常識がスタンダードではない。本書は、平成31年4月より順次施行される「働き方改革関連法」に対応している。HR担当者なら、人事制度や業務規程のつくり方、従業員教育手法について理解しておきたいものである。
※筆者11冊目の著書『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)は、発売2週間で3刷と好調です。応援していただいた皆さまに御礼申し上げます。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員