インデックス・長期・積立の「威力」と「限界」

日本経済新聞の編集委員の田村正之さんが、投資信託の積立の威力についてとても説得力のある記事を書いています(グラフも同紙から)。

グラフは、長期のインデックスデータが存在する先進国株式のインデックス(日本以外の先進国の円ベースの株式リターン)を使って5年、20年、30年の間、毎月積み立てたとして、資産がその時点までに累計投資額の何倍になったかを計算しています。

これを見ると、積立期間が長くなればなるほど、投資額に対する資産の比率が高くなっていることがわかります。5年間では積立額よりもマイナスになることがありますが、20年になるとリーマンショックの時でも収益はほぼトントンで平均2.3倍で資産が増えています。30年積み立てになると、どの時期でも元本を上回り、平均3.5倍の資産増加です。

これは先進国の株式だけでの結果ですから、更に日本株式や債券などを組み合わせてアセットアロケーションすれば、マイナスの可能性は減っていくことが予想されます(資産が増える倍率も下がりますが)。

このデータは金融資産を使った資産運用が長期の積立で効果を上げることを示していますが、一方で資産が増えるスピードにも限界があることも示しています。

もし、20年間のデータのように、平均で資産金額が累計積立金額の2倍程度になるとすれば、60歳までに3000万円の資産が必要だと思っている人は、1500万円を積み立てる必要があるということになります。20年で1500万円を積立ですから、年間75万円で毎月約6万円という計算になります。

しかし、絶対に2倍になる訳ではありませんから、最悪の場合は積立金額と同程度の1500万円に終わってしまう可能性もあります。

写真 AC:編集部

定期預金などで積立をするのに比べれば遥かに賢明な方法と言えますが、これだけで老後の不安を解消するのは、無理だと思います。例えうまくいって60歳で3000万円の資産を手に入れたとしても、その資産をどうやって老後資金として活用するか。そのソリューションが無いからです。

インデックスファンドを使った長期の積立は効果はあるが、それだけでは足りない。それが私の数十年に渡る「人体実験」から得られた結論です。

やはり金融資産だけではなく、不動産と始めとする実物資産を組み合わせることで、必要なお金を手に入れる仕組みを完成させることができるのです。毎月、投資信託を積立しているだけで安心してはいけません。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年1月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。