移植臓器は新疆ウイグル自治区から

長谷川 良

悲しいニュースが届いた。海外中国メディア「大紀元」日本語版(1月9日付)に「移植用の臓器は今、すべて新疆ウイグル自治区からきている」という内容の記事が掲載されていた。中国共産党政権は新疆ウイグル自治区で同化政策を推進、ウイグル人の固有の言語、文化を否定し、共産党政権の方針に従わないウイグル人を強制収容所に送って再教育している、というニュースは知っていた。そのウイグル人の臓器が中国移植市場で主要供給元となっているというのだ。

法輪功迫害の張本人、中国第5代国家主席、江沢民氏(ウィキぺディアから)

当方は12年前、中国共産党政権の法輪功メンバー臓器摘出問題をこのコラム欄で書いた。中国の気効集団「法輪功」メンバーに対する中国共産党当局の弾圧は激しかった。江沢民国家主席(当時)は1999年6月10日、法輪功メンバーの取締りを目的とした通称「610公室」と呼ばれる組織を設立した。旧ソ連連邦時代のKGB(国家保安委員会)のような組織だ。

共産党員が減少する一方、メンバー数が急増してきた法輪功の台頭を恐れた江主席の鶴の一声で作られた組織だ。「610」という数字は6月10日の日付から由来する。江主席の中国では、拘束された法輪功信者から生きたまま臓器が取り出され、共産党幹部の臓器移植用に利用された(「中国の610公室」2006年12月19日参考)。

中国当局によれば、同国では2005年までに通算約9万件の臓器移植が行われた。1999年以前までは約3万件だったというから、1999年から2005年までの6年間で約6万件の臓器移植が実施されたことになる。移植件数が急増した99年以降は法輪功が非合法化され、メンバーへの弾圧が始まった時期と合致する。

中国の不法臓器摘出の実態を報告したカナダ元国会議員のディビッド・キルガー氏は2006年11月21日、国際人権協会(IGFM)の招きを受けてウィーンで国際記者会見を開いた。同氏が、「中国は反政府グループの法輪功信者たちから生きたままで臓器を摘出し、その売買に関与している」と報告した時、記者会見にいた記者たちは信じられないといった驚きの表情を見せたほどだ。

キルガー氏によると、「臓器摘出は中国では大きなビジネスだ。政府関係者がそれに関与している」という。キルガー氏らがまとめた報告書には、法輪功メンバーの家族が死体となった親族を引き取った際、その死体には腎臓などの臓器が欠けていたという証言が記述されている(「法輪功メンバーから臓器摘出」2006年11月23日参考)。

「大紀元」によると、中国の臓器供給市場に今、大きな変化が起きているのだ。これまでは拘留されていた法輪功メンバーから臓器を摘出し、それを臓器移植市場に供給するルートがメインだったが、ここにきて新疆ウイグル自治区で拘束されたウイグル人の臓器を使用するケースが増えているという。

2018年8月、スイスのジュネ―ブで中国政府によるウイグル人弾圧への抗議活動を行う人たち(世界ウイグル会議Facebookより:編集部)

中国共産党体制が主導する臓器収奪という巨悪犯罪を懸念する専門家は昨年12月、ロンドンで模擬裁判・民衆法廷を開いた。そこで出廷者の1人が、「移植用の臓器は今、すべて新疆ウイグル自治区からきている」という証言を「知人家族が天津で移植手術を受ける際、主治医から説明を受けた」と報告しているのだ。

ちなみに、天津市で臓器移植を受ける外国人としては韓国人が多いという。韓国の人気番組「調査報道セブン」は2017年11月15日、中国臓器移植の闇を取り上げた番組『殺せば生きられる』を放送した。同番組によると、過去20年間で毎年約1000人、総計2万人が移植目的で韓国から中国へ渡ったという。すなわち、移植を希望する韓国人は今日、天津市の病院でウイグル人から摘出された臓器を大金を払って移植してもらっていることになる。

韓国政府は天津市の臓器移植ツアーを調査し、臓器提供先がどこかを知るべきだ。拘束された法輪功信者やウイグル人の臓器が不法に摘出され、韓国人に移植されている事実が判明すれば、天津市への移植ツアーを禁止すべきだ。

文在寅大統領は日本に対しては事実を曲げても厳しく追及するが、中国に対してはっきりとした言語でその人権問題を批判できるだろうか。中国共産党政権のウイグル人弾圧は国際社会が注目している。「多数の韓国人が中国共産党政権で弾圧され、迫害されているウイグル人の臓器を買って移植している」と批判されないためにも、文政権は韓国人の天津市移植ツアーの調査に乗り出すべきだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年1月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。