防衛産業から撤退する企業の矜持

先のブログでコマツが装甲車両製造から撤退することをご案内しました。
軽装甲機動車に関しては整備などもやらんそうです。これは複数の業界関係者や機甲化OBに確認した話です。

コマツ製造の軽装甲機動車(陸自第6師団サイトより:編集部)

コマツの売上は連結決算で2.7兆円、防衛省売上は約280億円、全体の1.1%に過ぎません。
以前は装甲車両の売上は1/3で後は砲弾や信管でしたが、昨今は軽装甲機動車の改修がダメ出しされ、8輪装甲車もキャンセルになってお先真っ暗でした。そこで撤退ということでしょう。

既に2014年に東洋経済オンラインの記事で警告していたとおりの展開になりつつあります。

コマツが防衛事業から撤退すべき5つの理由:取り組み姿勢が、キャタピラーとは対照的

残った弾薬信管も安泰ではありません。大綱別表にあるようにいずれは戦車や榴弾砲は現在の半分程度になり、コマツは精密誘導砲弾も開発を諦めたので自動的に売上は半分に減ることになるでしょう。迫撃砲は横ばいでしょうが。

ただ、財務省は弾薬業界の再編に熱心ですので、相当の圧力はかかるでしょう。であれば、こちらも将来撤退は目に見えています。

問題は撤退の方法です。

コマツは長年に渡って国際価格の3倍程度の値段で、性能の怪しい装甲車を開発、納入してきました。それは半分は陸幕、防衛省の責任ですが、企業側にも責任はあります。
その原資はすべて我々の払った税金です。

自分たちに実力もなく、特機部門の将来性が明るくないなら、早めに撤退するべきだった。
ところが延々と判断を伸ばして税金を食い物にしてきた。

これは名経営者と謳われた坂根元会長ですら、同じ穴のムジナです。
経団連会員の名門企業が税金食い物にして恥じないのはいかがものでしょうか。

地元の小学生にものづくりを教えるよりも、こっちの方のけじめつけるのが先でしょう。

更に申せば、撤退するにしても立つ鳥跡を濁さず、であるべきでしょう
まだ国内で基盤維持ができるのであれば、例えば事業を三菱重工に譲渡するか、あるでしょう。
防衛産業に残るならば本業との親和性の高い工兵機材に特化して、それも重工と協力していく、という手もあるでしょう。そういう手段を取らずに、後は野となれ山となれ、では社会的な責任を取ったとは言えずに、パブリック・エナミーと非難されてしかるべきです。

日本政府はこういう不良企業に対しては他の公的セクターからの入札でも締め出すべきだと思います。

■本日の市ヶ谷の噂■
コマツが軽装甲機動車を放り投げたこともあってか、陸幕は軽装甲機動車と高機動車を統合した後継車輌の開発を企画中、これに三菱重工は困惑し、某自動車メーカーが助平根性と示しているとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。