4月11日、僕は総理官邸に安倍晋三首相を訪ねた。雑誌『中央公論』の対談のためだ。今の政治について、僕が思っていることを率直にとことん聞いた。
まず、直近の「失言」問題だ。塚田一郎国交副大臣、そして桜田義孝五輪担当大臣と、よくもこんなに失言が続く。失言により辞任もやむを得ない事態が生じるのも、やはり「安倍一強」で、「神経がたるんでいるのではないか」と、僕は安倍さんに言った。
たるんでいるのでなければ、理念を失っているとしか思えない。この国をどうするか、どういう国にすべきか、という思いを無くしてしまっているとしか考えられないではないか。
自民党のほとんどの議員が、安倍さんのごきげん取りになってしまった。安倍さんに取り入って、党の公認をもらったり、大臣になろうと考えるようになった。それが原因ではないか、とも言った。
すると安倍さんは、「しっかりと引き締めなければならない」とはっきりと答えたのだ。これは、長期政権ゆえの問題点だといるだろう。
経済問題も深刻だ。政府は、2012年12月を起点とする景気回復の長さが、高度経済成長期の「いざなぎ景気」を超えた、としてきた。
だが、4月1日に発表された日銀の3月短観は、厳しかった。前回12月調査から、大企業の製造業が7ポイント悪化、非製造業も3ポイントの悪化となっていたのだ。これは12年12月調査以来の大幅な悪化幅だという。
政府がいう「経済成長」に、大いに矛盾している。加えて、「異次元の規制緩和」によって、いまや国の借金は1100兆円を超えている。GDPの240%にものぼる。こんな国は世界のどこにもない。
そのほかにも問題はある。人口減少問題、地方自治体の疲弊、地方統一選の投票率46%という国民の政治への無関心など。これら日本の問題を、とことん話し合った。
一方、長期政権だからこそ、できることもある。僕は最後に、ある「大問題」をぜひ解決してほしいと、安倍さんにぶつけたのだ。日米地位協定である。
イタリアやドイツ、フィリピンも、日本と同じような協定をアメリカと結んでいた。しかし、いずれの国も協定を廃止している。それなのに、日本だけが協定を廃止できていないのだ。いまだ、アメリカの占領が続いているようではないか。これを解決できるのは、安倍さんしかいないと僕は思っているのだ。
トランプ大統領、習近平国家主席、プーチン大統領といった、いま世界が注目するトップたちに会って直接、話ができるのは、安倍さんだけである。アメリカの情報筋によれば、トランプ大統領は、何か事が起こると、「シンゾーはどう思っているか」と問うという。こんなに信頼を得ている人物は、世界中で安倍さんくらいかもしれない。山積みの日本の問題に対して、しっかり立ち向かってほしい。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2019年4月19日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。