開票作業における不正手段とその対策

川口 賢

16日告示の仙台市議選挙ではポスター掲示板の表示に誤りがあった。仙台市では2014年の衆院選以降、すべての選挙でミスが起きている。このようないい加減な仕事をしていては、選管の人材は、たとえば証券や銀行業は、担えないだろうと思う。

開票作業の様子(※本文と関係はありません:岐阜県大垣市HPより)

さて先月の7月21日は参議院議員選挙の投開票日であり、私は開票立会人として神戸市灘区の開票所で開票に立ち会った。公職選挙法第67条「投票の効力は、開票立会人の意見を聴き、開票管理者が決定しなければならない」との規定に基づき、開票立会人は、投票の効力について意見を述べることができる。そのために、私が立ち会った開票所では、開票立会人は疑問票について票の現物を直接確かめることができた。

具体的には、無効票となる白票を百枚重ねて輪ゴムで縛った束を、立会人に回覧させ、立会人の手元に票の原本がある間にも、それを監督する職員はなく、自由に抜き取ったり加筆することが可能だった。

私はこの場面に、不正がおこる危険性を感じ、区役所職員と思われる者に「票から目を離さない方が良い」と助言したところ、直後は票を監督するために票の傍に控えていたが、しばらく時間が経つとまた監督せずに票を回覧させていた。私は手段を発想しただけで現実には実行しないが、開票立会人が使うのための長机の上にはご丁寧にそれぞれボールペンも用意されており、日本のどこかでは、たくさんの人間のうち誰か一人ぐらいは、この手段で不正を行ってるだろうと思う。

実際にこの時の選挙では、兵庫県尼崎市選挙管理委員会が集計した票数が、事前に把握した市内の投票者数より兵庫選挙区で20票、比例代表で13票多くなっていた。事前に十分検討し、不正が不可能な手段で開票作業を行うよう注意すべきなのに、それすらもできていないのだから、不正もミスもなくなるはずがない。

では、どのようにすれば良いか。

取引に不正やミスがあってはならず高度なセキュリティーが求められる株式取引などはすでにインターネットで行っている。ネットバンキングも普及した。このようにセキュリティーと利便性の向上を技術革新によってすでに実現している。選挙についても、いずれはインターネット投票に移行すべきだとは思うが、現在の仕組みを前提にしたもっと素朴な方法もある。

それは「選挙のお知らせ」か、望ましくは「投票用紙」に、通し番号をつけて、通し番号それぞれの投票行動をホームページ上などで公開する方法である。

たとえば、選管が投票用紙に事前に1番から10億番まで通し番号をつけておくと、有権者が受け取った用紙にはランダムな番号がついている。有権者は投票し投票用紙と同じ番号がついた半券を持ち帰る。選管は開票作業に伴い、通し番号それぞれの投票行動を入力しネット公開する。そうすれば有権者は自身の投票用紙番号の投票行動がホームページ上で正しく表示されていることを確認でき、また票数の合計は誰でも確認できる。

有権者と投票用紙番号はまったくの無相関で、番号を口外しなければ他人に自身の投票行動を知られることはない。そして自身の投票行動が匿名化されて公式ホームページに正しく表示されていれば、多くの他人の投票行動も同様に真実だろうと考えることができ、帰納的に全体としての投票結果の信頼性が格段に向上する。

まずはこのような方法を実装すべきだと思うが、いったん有権者に投票用紙に書かせた上で、公開用に選管で再度データを入力するよりは、そもそも紙を経由せずに直接有権者にデータを入力させた方が作業量の総量が少ないため、はるかに合理的である。インターネットサイト上に有権者が直接入力できる投票用フォームを用意し、従来の紙を媒介する投票方法を皆無にはできないとしても、投票所は集約し数を減らすのが良いだろう。

ちなみに、神戸市においては、この度の選挙の開票所の人件費だけで3000万円支出しており、選挙のための予算はおよそ5億円である。それが日本中で行われている。規模を考慮すればなおさら、システムを構築するのに、十分な金額だろうと思う。


川口 賢(かわぐち・まさる)   神戸市議会議員(日本維新の会)、JAPAN MENSA運営委員
1981年神戸生まれ。2004年神戸大学経済学部卒業後、日本語教師、眼鏡販売会社社員を経て、2019年神戸市会議員選挙(灘区選挙区)において初当選。現在1期目。