バチカンは2日、フランシスコ法王の32回目の外国訪問となるタイと日本両国の訪問日程を公表した。11月19日から26日の間、タイと日本両国を訪問する。そこでバチカン・ニュースが明らかにした訪問日程を紹介する。
フランシスコ法王の最初の2日間はタイ訪問だ。時間の制限もあって今回は首都バンコクだけとなる。初日の21日午前、タイ仏教徒代表を会合した後、サンクト・ルイス病院を訪ね、2、3人の患者に声をかけ、政界、外交界、社会有識者たちの前で演説。同日午後、今年5月に戴冠したラーマ10世に謁見する。
2日目はタイのカトリック教会で聖職者や修道院関係者と会い、イエズス会修道院に足を運ぶ。同日午後には他宗派の宗教関係者との会合。そしてバンコクの大聖堂で青年たちと礼拝をもつ。
ちなみに、タイでは国民の90%以上が上座部仏教(テーラワーダ仏教)を信仰している。少数派としてはイスラム教、キリスト教、ヒンズー教だ。キリスト教は国民の0.8%と1%にも満ちない。その意味で、日本のキリスト教の状況と酷似している。タイ全土で寺院があふれ、黄衣をまとった僧侶の姿が至る所で見られる。
次の訪問国は日本だ。故ヨハネ・パウロ2世が1981年、訪日して以来、38年ぶりの訪日だ。法王が日本好きであることは良く知られている。フランシスコ法王は聖職者になった頃、日本宣教を希望したが、健康問題があって実現できずに終わった。同法王は2014年1月に行われたサンピエトロ広場での一般謁見で中東からの巡礼信徒に対し、厳しい迫害にもかかわらず信仰を守り通した日本のキリシタンを例に挙げて励ました、という話が伝わっている。
フランシスコ法王は東京のほか、被爆地の長崎と広島を訪問する。タイから日本入りした法王は23日夜、日本のカトリック教会司教団と最初の会合。24日の日曜日には長崎に飛び、そこの原爆公園で世界に向かって原爆の恐ろしさを伝え、 豊臣秀吉のキリシタン禁止令(1597年2月5日)によって26人のキリシタンたちが殉教したことを追悼する西坂公園の記念碑、記念館を訪ねる。26人の殉教者はその後、聖人に列聖された(「日本26聖人」と呼ばれる)。ピウス12世(在位1939~58年)は西坂公園をカトリック教徒の公式巡礼地に認定している。
長崎の野球場でミサを行った後、フランシスコ法王は次の訪問地広島に向かう。そこで平和集会に参加し、世界に向かって同じように原爆の全廃を訴える。25日には東京に戻り、2011年3月、東北を襲った地震、津波、そして福島第一原発事故の犠牲となった大震災の生存者と会う。そして皇居を訪問し、今年5月に天皇に即位された徳仁天皇閣下を謁見訪問した後、東京ドームで若者たちと記念礼拝をする。安倍晋三首相と会談し、政治家、外交官、有識者の前で記念スピーチすることになっている。
日本滞在最後の半日、フランシスコ法王はドイツのイエズス会が創設した東京のソフィア大学(上智大学)で教会関係者と文化センターで礼拝し、朝食と共にする。同大学での演説は法王の32回目のタイ・日本訪問での最後の演説(通算18回目)となる。フランシスコ法王は26日、ローマのフィウミチ―ノ空港に到着予定。
なお、日本のカトリック教会の信者数は約50万人で人口の1%にも満たないが、日本には海外から50万人以上の出稼ぎ労働者がおり、フィリピン、韓国、ブラジル出身者にはキリスト信者が多い。また、フランシスコ法王の訪日に合わせて、海外から多数の信者たちが日本を訪問するとみられている。
以下、「ローマ法王の訪日に何を期待するか」2018年11月27日、「日本教会にもあった聖職者『性犯罪』」2019年2月16日、「法王訪日を政治目的に利用するな!」2019年9月15日、等を参考にしてほしい。
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「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年10月6日の記事に一部加筆。