財務省の財政制度分科会(平成30年10月24日開催)において防衛予算に関しても討議されまた。その資料を財務省がHPで公開しています。
引き続きこれについて重要な指摘とその解説を行います。
資料では米国防総省の調達ポリシーについて説明、防衛省の有るべき調達姿勢を示唆しています。
次期中期防の策定に向けた論点の整理(P25)
≪論点①:次期中期防や防衛関係費の水準≫
○ 実効的な防衛力の整備は、国民の確かな信頼と理解の下、健全かつ持続可能な財政を含めた総合的な国力を背景として初めて可能となるもの。次期中期防においても、社会保障など他の主要経費とのバランスを図りつつ、財政の持続可能性を踏まえた合理的な水準とする必要があるのではないか。≪論点②:次期中期防策定に当たり、改善すべき点≫
○ 近年、新規後年度負担が増加しており、予算の硬直化を招くとともに、平準化されない形で歳出規模の増大を招きかねない状況。防衛関係費を適切にマネジメントするためには、次期中期防においても、新規後年度負担に一定の歯止めをかけていく必要があるのではないか。○ 中期防別表において、国民に対する説明責任の観点から、計画単価を明示した上で、ライフサイクルを通じたプロジェクト管理等を通じてこれを遵守するとともに、企業側のコスト削減努力を促し価格低減を図っていくべきではないか。その際、単価が上昇する場合は、優先順位に従った調達数量のスクラップ&ビルドを徹底するべきではないか。
≪論点③:調達改革の一層の強化≫
○ 調達改革は、一時の取組ではなく、民間企業同様、永続的に取り組んでいくべき重要な課題。次期中期防においても、装備庁の能力・体制の更なる強化や防衛産業の再編などを通じて一層の効率化・合理化を図り、現中期防における達成額(7,700億円程度)を大きく上回る努力を行うことが求められるのではないか。○ 装備品について、島嶼防衛や弾道ミサイル防衛を重視する観点から、必要性が認められても優先順位が低いものについては、調達時期の先送りなど適確なメリハリ付けを行っていくべきではないか。
特に、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域において能力強化を図るのであれば、既存の装備体系の徹底した合理化・効率化が不可欠ではないか。
これには取り上げてられていませんが、重大な要素があります。それは首相官邸やNSCからのトップダウンで高価な装備を押し付けている、という現状です。かつてのナチス第三帝国時代、ヒトラー総統は自分の思いつきで、兵器の採用や、不採用を国防軍に押し付けましたが、それと同じことが現在の我が国でも行われています。グローバルホーク、オスプレイ、AAV7、イージス・アショアなどはその典型例です。
内局官僚はそれに異を唱えることなく、官邸の意向を忖度しています。
これらの高額な米国製装備が自衛隊の予算を圧迫し、その他装備の調達や、維持費、訓練費が削減されて稼働率や練度が大幅に下がっています。結果として自衛隊が弱体化して、米国の兵器産業が儲ける構図となっています。これは由々しき問題です。行政のプロセスを無視しています。
また旧式化した装備をいつまでも維持しているのも問題です。旧式化した護衛艦が多数維持されていますが能力が低いのに、多数の乗員が拘束されています。これらが行っている哨戒活動は無人機に置き換えたほうがよほど効率が上がるはずです。
またかつてはローターブレードの欠陥で2年、現在はエンジンの欠陥で3年以上全機飛行停止、ネットワーク能力も皆無はOH-1は全機飛ばすならば、あと10年の年月と400億円以上の多額の予算がかかります。本来AH-64Dで更新されるはずだったAH-1Sも老朽化、旧式化が進み戦力外ですがこれまた多くの人員が貼り付けられています。当然維持費もかかります。
すでに現代の戦闘に耐えられない旧式装備は廃棄し、その予算と人員などのリソースを他に振り向けるべきです。
更に申せば、来年度の防衛予算+事項要求+[当年度の補正予算での「お買い物」]が合算して本来の来年度の防衛予算という不透明な構図はやめるべきです。事項要求も一昨年度までは概算に含まれていました。また何度もご案内のように補正予算は本来予算編成時に想起しえなたった災害とか為替の変動などによって必要となった金額を手当するものであって、装甲車だの航空機を調達する予算ではありません(災害などによる損失は別)。
このような不明瞭をほとんどの記者クラブメディアは勉強不足なのか、政権に忖度しているのか知りませんが、とりあげず、「来年度要求分」だけを「防衛予算」であると報じ、解説や社説を書くのは一種の詐術であります。
■本日の市ヶ谷の噂■
防衛医科大学校では学生にEmailアドレスを与えない、夜に空調が切れるためにとても暑い、寒い、居室に鍵がない、粗大ゴミ業者とのやりとりや自転車の管理など、指導官の業務を学生に押し付けるなどの人権侵害が多数との噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。