私は嘗て、『人生を生きて行く上で大事なこと』(10年3月2日)と題したブログの中で、次の通り述べたことがあります――鉄血女史のサッチャー元英国首相は「指導者の条件」として「①スタミナを持つ、②決断力、③説得力、④孤独に耐える、⑤家族の協力を得る」の5つを挙げています(中略)。如何に自分を律するのかということとスタミナというものの関わりには非常に強いものがあります。
先ず②決断力および③説得力というのは、指導者の条件として特段の指摘を要さないでしょう。また⑤家族の協力を得るというのも、ある意味当たり前の話です。取り分けサッチャー元首相は一人の母親でしたから、家族の協力を得ねばならない事柄が沢山あったのではないかと思われます。その時「孝」に貫かれた親子の信頼関係を醸成していれば、当然ながら子供とは協力を得ることが出来るでしょう。夫との良い協力関係は、別な形で作って行かなければならないでしょう。
ちなみに、此の孝の字義より述べますと、孝の字は「老」と「子」に分かれます。即ち孝というのは、「年をとって腰の曲がった老人が杖をつく形が老であり、それを子が支える形」、「年長の者が年下のか弱い者を庇(かば)う形」です。親と子が双方から慈しみ合い、力を合わせて労(たわり)合い、助け合う姿が孝というものであります。
次に④孤独に耐える、とは一面で正しいと思います。要するに、様々な衆知を集め色々な人の意見は聞くものの、最終の断を下す部分は独りで行い、その責任は自分が負わねばならない、といった意味において常に指導者は孤独です。但し、判断に至る迄の間は決して孤独ではありません。何故なら英知の結集に努めるわけですから、必ずしも孤独であるということではないと思います。
最後に①スタミナを持つというのは、当ブログにて本年8月にも触れた骨力(こつりょく)の話です。私としては、上記指導者の条件5つの内で之が一番大事だと捉えています。私が私淑する明治の知の巨人・安岡正篤先生も、「人間の徳性の中でも根本のものは、活々している、清新溌剌ということだ。いかなる場合にも、特に逆境・有事の時ほど活々していることが必要である」と述べておられます。人間やはり此の骨力というものが、極めて大事だということです。
骨力とは、安岡先生によると「人生の矛盾を燮理(しょうり:やわらげおさめること)する力」のこととも言え、人間本来持っている生命力(…包容力・忍耐力・反省力・調和力等)のようなものを指して言います。平たく言うと「元気」であって、骨力から気力・活力・性命力が生み出されます。
そうして骨力が気力を生み、次第に精神的に発達すると生きる上での目標・目的となる「志気」「理想」を持つようになるわけです。冒頭「如何に自分を律するのかということとスタミナというものの関わりには非常に強いものがあります」と書きましたが、私は全て此の骨力と関係していると思っています。
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