青年会議所の青年の定義は40歳以下であるため、私は公益社団法人東京青年会議所(略称:東京JC、2019年現在会員数約600名、文末に詳述します)を2019年12月で卒業となりました。
活動を通じて非常に価値ある経験を多々させていただき、関係者には感謝いたします。「謎」が多いこの団体について、少しでもご理解いただきたく、寄稿させていただきます。
公益社団法人日本青年会議所(Junior Chamber International Japan、日本JC、JC)は、リーダーを志す青年経済人の社会活動を目的とする日本各地の694青年会議所(正会員総数約34,500人)を会員として組織した公益社団法人です。
東京JCは694青年会議所のひとつで、日本で最初にできた青年会議所です。
ひとつの側面については東洋経済ONLINE「地元の若手エリートが集う「青年会議所」の正体」によくまとめられておりますのでご紹介させていただきます。私は東京JCに3年余りしか所属していない上に、他地域の組織を詳しくは存じ上げないため、個人的な見解を述べさせていただきます。
「習うよりも慣れろ」で飛び込んでみた
いずれにせよ各会員がJCについて熱い想いを持ち、見解は異なることでしょう。私は勧誘をされて、入会しましたが、それまで青年会議所の存在自体を知りませんでした。
インターネット検索すると、年会費は18万円、社業・家庭を省みず、倒産・離婚をする人が多数など、ネガティブな印象を持たざるをえない情報があり、入会を躊躇いました。
代表的な事業として、わんぱく相撲、各種選挙の公開討論会などがあり、入会候補ということで事業の見学をすると、会員は必死になって運営をしていました。何なんだこの団体は、真剣に打ち込む理由として何があるのだ、と気になりました。
きっと自分の性格上、入会したら没頭してしまう可能性があり、中途半端な気持ちでは入会できないだろうと確信しましたが、結局は先輩たちなどからの強い勧誘などもあり入会する運びとなりました。40歳になり卒業するまでの3年間は走り抜けていくのであろうと。
入会するためには、右も左もわからず、毎月開催される会議と、例会・事業などと呼ばれるイベントに参加させられます。
例会・事業では、有名人が講師でいらっしゃるなど非常に華やかです。わからないことがあったら質問をして、といわれても、専門用語が飛び交い、何をいっているのかわかりません。「習うよりも慣れろ」の世界感で入会する必要があります。
会議、会議…毎日のようにやるワケ
入会後にわかるわけですが、例会・事業などの企画・運営のために少なくとも各級、各セクションで毎月会議が行われ、内容・時期によっては毎日のように会議をします。
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ!」「ゴミを拾うのではなく、ゴミを捨てさせない社会を創る」といった抜本的な社会変革を図る事業を展開します。わんぱく相撲や公開討論会は毎年恒例で開催されるものでありますが、他の事業においては毎年新しいことに挑戦していく団体です。
会員は社業で成功を収めている方が多く、その成功体験は業種、個人によって全く異なるため、ひとつのイベントを企画するにあたり、全く異なる手法が数多く提案されます。計画策定には社会背景、目的、JCが行う意義、企画内容、予算などを喧々諤々で議論し続けます。社会課題を敏感にキャッチし、困った人たちの声を聴き、行政と連携し、公益性が高い事業を展開します。
自らのお金儲けのために事業展開はしません。表舞台の例会・事業は華やかですが、裏では様々な意見がぶつかり合い、喧々諤々の議論の末に計画が策定されていきます。それが数多の会議をする理由であり、青年会議所のパワーの源泉になるのだと思います。
そんな仲間や環境を与えてくれるJCで私が特に熱を入れた事業について紹介させていただきます。
ダイバーシティマネジメント
2017年、東京JCではダイバーシティマネジメントの推進を掲げており、私は総合政策委員会に所属し、提言書を作成させていただきました。提言書の概要は「ダイバーシティマネジメントのすゝめ」に取りまとめさせていただきました。
新聞・テレビ・教育を中心に情報を得てきたステレオタイプの時代においては社会全体が大きなひとつの価値観を共有していましたが、ICTの進展により、多様な価値観に対して、多様なサービスが創出されてきました。もはや個人の思想・価値観が多様化するのは極めて必然的なこと、不可逆的な状況となりました。
そのような時代の中でダイバーシティマネジメントの必要性とその手法について提言させていただきました。
ラグビーワールドカップ日本代表の強さもその提言内容から理解できるものとして、信じております。(企業は誤解?ラグビー日本代表に見る“多様性”のホントの意義とは)
わんぱく相撲
東京JCは23区それぞれに組織があり、私は中野区委員会に属しており、わんぱく相撲中野区大会の主催者メンバーとして運営に参画しました。
地元経済団体(商工会議所、法人会、商店街連合会、観光協会)と連携をして、子どもたちの健全育成事業として通算40回を超える開催となっております。勝ち進むと国技館で開催される全国大会までコマを進めることができます。
歴史ある大会の持続可能な開催に向けて、邁進させていただきました。
選挙の公開討論会
2018年に中野区長選挙があり、選挙が始まる前に公開討論会を開催しました。
2017年の衆議院議員選挙においても、選挙活動期間中に無観客の討論会をWEBで配信させていただき、2万PVを記録したものの、公開討論会の開催意図が選挙への興味が薄い方々が投票行動を起こすことが目的であったために中野駅北口という野外ロケーションの公開型にすることを決断しました。
まずは近々、選挙があることを通行者に認識してもらうことが重要です。またSNSを使った広報、群流センサーを使った傍聴者数の測定など新たな様々な試みを行い、関係者に評価していただきました。
様々な団体が動員をかけ、広場に集まり、大きな騒ぎになる可能性があると警察当局からの連絡があり、私服を含む35名の警官に見守られながらの開催となりました。
各立候補予定者と支援者の熱い想いが駅前広場でぶつかり合いました。
多くのJCメンバーにも助けられ、無事に開催することができました。
この討論会の効果は微力でしょうが、少なからず、駅前を通勤路にされているエリアの投票率は8ポイント増加、全体の投票率は29.49%から34.45%までと5ポイント以上あがりました。
事業を通じて、選挙に興味を持っていただけたと考えております。
治水事業
私がもっとも力を注いだ事業でした。
私は、大学助手・公務員・研究者・政治家・会社員・ボランティアなどを経験し、その集大成ともいえる「中野まちづくりキャラバン2018~クールなルールの創造~ ゲリラ豪雨を迎え撃て ‼︎ 世界初の技術を使った水防訓練~」を開催しました。
気象技術の進展により、洪水が発生する30分前にそのアラートを出すことが可能となったことから、そのシステムを使った避難訓練を実施しました。その様子はテレビ・新聞にも取り上げていただきました。
事業実施には行政・研究機関・大学・地域・町会・民間会社など様々な連携が必要となり、そのまとめ役としてイノベーションマネージャーという役職が欠かせないと提言させていただいております。
今年の2019年の台風15・19号を受けて、この事業の再評価をいただいているところであります。
詳細は「ゲリラ豪雨を迎え撃て ‼︎ 世界初の技術を使った水防訓練」に掲載させていただきます。
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上記の試みは第13回マニュフェスト大賞政策提言賞ノミネートをいただくほどに成長いたしました。
仲間でやってきたことが報われた瞬間でした。まだまだ道半ばの事業なのでしっかりと前進させて、成果を出していたいと思います。
もうひとつ、新しい事業を取り組むうちに感じましたが、青年会議所の各地域において、新たな挑戦に向かうスタイルは、
加藤 拓磨 中野区議会議員
1979年東京都中野区生まれ。中央大学大学院理工学研究科 土木工学専攻、博士(工学)取得。国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部 研究官、一般財団法人国土技術研究センターで気候変動、ゲリラ豪雨、防災・減災の研究に従事。2015年中野区議選で初当選(現在2期目)。公式サイト