44日間のラグビーワールドカップが終わり、日本代表の試合のみならず、すべての試合に日本国民が感動しました。にわかファンであるために詳細は存じませんが、どのチームも多国籍メンバーでダイバーシティに富んでおり、ダイバーシティマネジメントが進んでいるように見えました。
もちろん、ラグビー日本代表にも「ダイバーシティ インクルージョン」の理想形を見ました。そうした一方で、行政・企業等における「ダイバーシティ」の推進・検討には、抜本的な考え方として勘違いしたものが見受けられるようにも感じます。
ラグビー日本代表においては代表登録31人中15人が日本ではなく、他国にルーツを持つ方々です。
そして何よりもキャプテン、リーチマイケルはニュージーランド人です。
しかし日本代表選手は一般の日本人よりも日本を愛し、大会前に国家・国歌に対する理解を深めるため、さざれ石を見学するなど、誰よりも日本人の魂をもったチームでした。
優勝した南アフリカも同国初の黒人キャプテンであったことはダイバーシティ推進において世界全体として、次のステージに進んでいくことが期待されるものでした。
さきの2019年参議院選挙でも各党の政策としてダイバーシティ推進を訴えてきました。
時代は間違いなく、その方向に進んでいくべきであります。
私は1年前に「ダイバーシティマネジメントのすゝめ」をアゴラにエントリーさせていただきました。
ポイントとしてダイバーシティマネジメントを進めるために以下の三つのステップが必要だと考えます。
STEP1:ダイバーシティマッチングの導入
(それぞれの個性が協力し合い仲間を募る)
STEP2:ダイバーシティポジションの相互理解
(それぞれの位置関係を理解した上で意見を尊重する)
STEP3:ダイバーシティハイブリッドの構築
(共通目標を設定し、スパイラルアップしていく)
行うべきことは価値観の共有ではなく、目標の共有です。
上記は一般的な社会環境においてダイバーシティを進めるためにこれだけのSTEP(労力)が必要でありますが、ラグビーにおいては「チームの勝利」という最初からSTEP3の共通目標の設定がなされているために「ワンチーム」というキャッチフレーズの下、ダイバーシティマネジメントがなされました。
共通目標を持ち、国とチームを愛することでさらに強固な信頼関係を得て、ダイバーシティインクルージョンが効果的に発揮できます。
しかし一般的な社会において、例えば外国人雇用をするとき、雇用主サイドの“企業を成長させたい”、雇われサイドの“仕事が欲しい”という点のみで利害が合致する場合は、ワンチームとは言い難いです。
これは外国人雇用に限ったことではなく、転職が当たり前になった現代社会における特徴ともいえます。
終身雇用制度が崩壊する中、愛社精神を育むことは難しいですが、別の観点から共通目標を見出すことが企業成長へのひとつの鍵だと考えます。
地域社会、行政サービスにおいては、共通の目標を見出しづらく、様々な団体・個人が権利主張をするだけで、自己中心的になっていることが散見されます。
また弱者救済とダイバーシティを絡めることが逆に理解が進まない原因とも考えられます。一般の方々からは弱者救済することによる自分へのメリットを感じられないからです。
権利主張と弱者救済はダイバーシティと切り離し、別の形にした方が推進されていくと考えます。そして権利主張と弱者救済がない中でワンチームになれる共通目標を設定すべきです。
ラグビーのように仲間のために自分を犠牲にし、自分のためではなく、仲間のために動くとき、仲間からの信頼が得られ、助け合えるのではないでしょうか。
強者ばかりが生きやすい社会にするな、とのご意見もあるでしょう。しかし、現実問題として、強者の余力を弱者に回す以外に方法がないのではないでしょうか。
一般社会においては知ってか知らずか、自己犠牲で頑張る人を増やすことで、弱者救済につながっていくべきです。
そういったことを踏まえると、ラグビー日本代表に、まさに理想のダイバーシティマネジメントを見ました。
権利主張と弱者救済の“プロパガンダ”の手段として、ダイバーシティという言葉が乱用され、逆に推進を阻んでいると感じ、あえて苦言を呈させていただきました。
加藤 拓磨 中野区議会議員
1979年東京都中野区生まれ。中央大学大学院理工学研究科 土木工学専攻、博士(工学)取得。国土交通省 国土技術政策総合研究所 河川研究部 研究官、一般財団法人国土技術研究センターで気候変動、ゲリラ豪雨、防災・減災の研究に従事。2015年中野区議選で初当選(現在2期目)。公式サイト