男性の育児参加は休むことだけが良いとは限らない

昨年から男性の育児休暇の取得をもっと促していこうという議論が高まり、今年は厚生労働省が育児・介護休業法(育介法)改正案を2021年の通常国会への提出を目指し、議論になっています。「義務化」という言葉も出ていますが、法改正の柱としては“育休の取得を促すため、個々の従業員への周知を企業への義務付け” “育休中の給与を補う給付金の額を引き上げ”などが議論されているようです。

この背景には、男性の育休取得が6.16%で、女性の82.2%と比べて格段に低いという現状があります。※厚生労働省から「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」より

やはり、男性の育児参加を増やし、少子社会にあって子育てしやすい社会環境を整備していくことは本当に重要なことだと思います。先ほどの義務化は取得を義務化するのではなく、その仕組みを社員に説明・告知することを会社に義務化するというような議論がなされているようです。

男性の取得率は6.16%ですけれども、その内訳は、5日未満が36.3%、5日以上2週間未満が35.1%ということで、二週間未満が7割を占めています。すなわち育休を取得したけれども、期間も短く、本当に子育てに役立ったのかというような「名ばかり育休」も多いようです。身も蓋もないことを言いますが、そもそもパートナーの育休を望んでいるのでしょうか。

当然ですが、産後の体で大変なときにオムツ替えや、買い物などにイクメンパパがやってくれれば大歓迎ですよね。ところが、そうではなく休んでいるならば、面倒を見る大人が1人増えちゃうだけです。また収入についても、育休取得前の賃金を支給する育児休業給付金(最大67%)が半年間あったとしても、結果として収入は減るわけです。法改正を前提にした厚労省の検討では出産後1ヶ月まではこの給付金を80%に引き上げるという議論もあるようです。

とにかく、全ての子育て世帯が男性の育休取得を本当に望んでるんでしょうか。

例えば近くに親の両親がいて子育てを手伝ってくれるケースもあるでしょう。また、保育園を利用できるケースもあるでしょう。まとまって1ヶ月や2ヶ月の休みを取るよりも、なるべく長期にわたって早く帰ってきてほしいという人だっているでしょう。

子供の入浴や夕方の家事をだけを手伝って欲しい人や、お母さま一人でゆっくりお風呂に入りたいという願望の人もいるでしょう。はたまた、家事などをやってくれるサポートサービスを利用したい人もいるでしょう。

さらには企業側の立場に立てば、大企業ならともかく、中小企業などの企業規模では長期で休まれたら仕事にならず、会社潰れるよって話もあり得ます。一言で言えば、みんなそれぞれ事情が違う。これ当たり前のことですよね。

とにかく育休を取得をしやすくすることは決して否定をされることではありません。けれども、これだけ人手不足と言われている時代なんですから、若い社員を雇う会社や組織そのものの姿勢が問われていると思いますす。

ですから、国が育休を強制するよりは、各会社組織が多様な取り組みをできるようにサポートをしていく、そしてそういう情報を積極的に公開していくほうが大事だと思うんですね。そうでないとこれからは採用できない時代になると思います。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年1月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。