産油国の思惑、原油価格はどうなる?

13年ぶりの安値を付けた原油価格の動向は世界の経済界だけでなく様々な人への関心を引き付けています。日本のテレビのインタビューをみていると一般の方はガソリン価格の下落を素直に喜んでいるようですし、私の様に国際線を頻繁に使う者にとっては航空機のサーチャージがかからなくなったことで実質大きな値引きになりありがたく思っています。

一方で石油生産国にとってはこの輸出が国家を支えるわけでベネズエラのように国家が緊急事態宣言を発するような状況になります。サウジもロシアも国家財政は大赤字となり、経済成長は大きく下押しし、これが世界経済にも大きな影響を及ぼしています。

本来であれば石油依存国は早めに国内産業の多様化に努めなくてはいけないのですが、甘い汁は永遠に続くという神話にしがみつきたいのでしょう。なかなか想定通りには動いていないようです。

となれば、石油のバルブを閉めるしかないわけですが、OPECという中東を中心とした13の産油国が集まって調整することでかつてはワークしたものの非OPEC諸国の産油量は増え続け現在では6割以上がOPEC以外からの産油となっています。

そこで期待されたのが非OPECの代表格であるロシアとOPECの盟主、サウジとの減産調整でありました。カタールで開催された会議の結論からすると1月産油レベルでの凍結であります。多分、このニュースが伝わった時、減産報道に期待していた向きもあり、かなりネガティブに捉えられたようですが、数日して消化すればこの凍結が第一ステップで最悪期を逃れそうだという解釈に変るとみています。

実はこのニュースはよく読まないと間違った解釈になるのですが、今回の会談はサウジ、ロシア、ベネズエラにOPECの議長であるカタールの4カ国のみの非公式会合です。そして、基本方針には他国も同調し、「シェアの維持」を図ることに主眼が置かれています。つまり、「産油量調整」よりお互いの「市場シェアの凍結」であります。これはメディアのニュースのポイントがずれているところもある気がします。

問題は原油輸出再開するイランですが、ここについては既存のマーケットシェアがないため、イランで個別会合を開き、産油量を計算式に基づき調整する、としています。イランはこの点についてはまだ同意していません。また、アゼルバイジャンの様に全く同調する気がない、とする国もあります。しかし、サウジ、ロシアに議長国カタールが監視をするという体制になればアゼルバイジャンという小国がそれを無視することは政治的に難しいと思われ、一定の足並みをそろえることになるとみています。

また、今回の合意は今後数か月で今回の凍結案に対する産油国の足並み、およびその効果を見極めたうえで次のステップに進む公算を匂わしており、夏前には第二弾が打ち出されるような気配があります。

アナリストの予想は今年末までに原油は40-50ドルまで戻す、と読むグループと30ドル前後に留まると見るグループがあります。30ドル程度に留まるシナリオはこの合意の足並みがそろわず、減産に向けた調整に失敗するシナリオだと思います。

もう一つのワイルドカードはアメリカのシェールオイルでありますが、数字を見る限りリグの数は2月12日現在で541と先週より30本、順調に減っています。一年前と比べ実に817本の減少であります。カナダも1週間で1割ほどリグの数が減っています。つまり、アメリカのシェールオイルは順調にその影響力を落としてきており、シェールオイル一つのリグからの寿命が短いこと、銀行が融資に消極的なことも踏まえればアメリカシェールオイルの影響力は遠からずかなり薄まるのではないかと思います。

となれば、我々が安いガソリンやサーチャージなしの航空機を利用できるのもそう長くはないのかもしれません。また、日本にとっては原油の値上がりは電気や生活必需品の価格の影響も懸念されますが、個人的には再び100ドルに戻ることもなさそうなので影響はある程度吸収できるのではないかと楽観視しています。むしろ、世界経済の下落への歯止めという意味では総合的にはプラスになると考えています。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 2月17日付より