欧州中央銀行の手詰まり感

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公約だった欧州中央銀行の金融緩和。ドラギ総裁が用意したのはいわゆるパッケージディール。利下げが3種類に量的緩和は増額の上に社債まで購入で「これでもか」という盛りだくさんの内容でした。GMT12時45分にドイツで始まったその発表。市場に反応が出始めたのが13時頃。ドイツ株式市場が急騰し、ユーロ/ドルの為替はユーロが一気に1.6%ほど下落しました。

が、ドラギマジックはそこまで。その後のドラギ総裁の会見がいけませんでした。「利下げは当面打ち止め」。これに市場が鋭く反応、それまで200ポイント以上上げていたドイツ株式市場は逆に終値で200ポイント以上下げる「仕打ち」となってしまいました。ユーロドルの為替はその後、急騰、前日水準を大きく上回るユーロ高状態となっています。

今週から来週にかけて欧州中央銀行、日銀そしてFRBと続くこの重要イベントの第一弾は正直、つまづいたという気がします。

私は第一報を見た瞬間、2か月も期待をさせていた割には想定通りの規模に留まったな、というのが直感でした。私には金融政策の奥行にほぼ限界がきたように感じられます。「幾らでも下げられる」とドラギ総裁も言っていますし、黒田総裁も同様の発言をしていますが、下げられるのと政策効果は違います。極端な話、中銀預金金利をマイナス0.3%からマイナス0.4%に引き下げたところで、「だからどうなの?」という気がします。

ドラギ総裁も黒田総裁もインフレ率の回復に衷心より願っているわけですが、私には金融政策の効能は既に終わり、国の経済政策や対策が今後はキーになってくると感じています。黒田総裁が来週、どのような判断を下すのか、欧州金融銀行の今回の決定を受けて様々なオプションを考えていることでしょう。直感的ですが私は現状維持に留まる気がします。それは日本におけるマイナス金利の効能はデンマークやスイスのような小国とは違う点、そして欧州ではクスリの効き目の疑問視する声がより強まった、ということであります。

ここから類推します。アメリカはFOMCで後出しじゃんけんをするのですが、基本的には3月の利上げはないでしょう。欧州中央銀行は利下げ打ち止めを明白に宣言しましたし、日本も更なる緩和は現在の10年物国債まで波及しているマイナス金利が現在0.2%程度の15年物に波及し、より長期の国債のマイナス化が進みます。それに対してどれだけのインフレ効果があるのか、といえば黒田総裁には見えるそうですが、市場ではまだ確認できません。

とすれば日銀もこれ以上の緩和に一定のブレーキがかかりやすいバイアスが出てきます。これが意味することは何でしょうか?日銀も金融政策行き詰まり感がでて円高への動きです。今、市場が期待しているのは日銀のマッチポンプで円高傾向になると日銀がウルトラマンのごとくやってきてサプライズでなにかやってくれる、との期待です。もはや内容ではなく、単なる刺激です。しかし、その刺激に快感を感じているのは市場のプレーヤーであって銀行の貸し出しが突然増えるわけではないのです。ここに違和感があるのです。

欧州のインフレ率の改善には構造改革が最重要課題となります。特に硬直化した労働市場に高賃金化が進む欧州にアジア諸国の安値攻勢にガチンコ勝負すること自体に無理があります。この場合の選択肢はいくつかあります。①ブロック経済化し、欧州経済網に関税などのバリアを設ける、②中東、アフリカなどの市場に参入しやすくする仕組みづくり③欧州の強みを生かした事業再生(イタリア、フランスなどの芸術やデザイン性や食文化、ドイツ主軸の工業化)といった政策が必要になります。(①は決して良い案ではありませんが、欧州の保守化の動きはこれを増長させないとは言い切れません。)今の欧州にはユーロ圏という甘えがあり、その枠組みの維持に一杯いっぱいで発展的思想が欠如しています。ギリシャ、南欧、今度はイギリスです。いったい、いつになったら次の飛躍があるのでしょうか?

2016年はゲームチェンジャーの年と申し上げていますが、金融政策もそうなるのかもしれません。いずれにせよ、来週の日米の政策に注目の視点は移っていきそうです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 3月11日付より

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。