今週のメルマガ前半部の紹介です。数年前から、主にネット上で「竹中平蔵が日本衰退の元凶だ」だの「あいつは規制緩和で自分が甘い汁を吸っている」だのといった言論をちらほら目にするようになりました。
最近は週刊誌レベルにまでそうした意見が浸透し始めているようで、さすがにご本人もカチンときて反論されている様子。
昨日の新潮に、また誹謗中傷記事。「竹中は大臣時代に製造業の派遣を解禁。パソナはそれで大儲け」
もう何度も述べたが、派遣解禁は厚生労働大臣の決定、私の担当ではない。それにパソナは、製造業派遣は一切やってない。政策は複雑だ。お茶らけたコメンテーターは、もっとちゃんと勉強した方がいい。— 竹中平蔵 (@HeizoTakenaka) June 19, 2020
なぜ一部の人たちにとって氏は悪の黒幕的存在とうつるんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。
“竹中批判”という精神安定剤を必要とする困った人たち
筆者は別に竹中氏を擁護する義理も無いんですが、氏に対する批判がどういうメカニズムで発生したかについては関心があり、いろいろと注目しています。というわけでその発生のメカニズムとどういう層に必要とされているかをまとめておきましょう。
世の中には情報弱者(以下、情弱)と呼ばれる人たちが存在します。個人的には以下のような定義ですね。
・自分の願望とファクトの区別がつかない
・自分の見たいものしか見ず、聞きたいことしか耳に入れない
・自分で努力も成長もできない
・自分の不都合は常に誰かのせいだと考える
書いてて眩暈がするようなボンクラぶりですけど、決してマイノリティというわけでもなく、本屋に行けばこうした情弱向けの本がいっぱい並んでいたりするものです。
たとえば。こうした人たちは「増税か社会保障カットか」という議論が行われている時に「バラマキで経済成長するんですよ。国家の借金は国民の資産!」と言われるとパクっと食いつきます。
日本の国際競争力が年々低下し新興国にキャッチアップされているといったニュースが続いても「大丈夫、中国も韓国ももうすぐ崩壊しますよ」という餌を垂らされるとやっぱりパクっと食いつきます。
もちろん「大丈夫、日本はこんなにすごいんですよ」という釣り針にも入れ食い状態です。
よく「“中韓崩壊論”と“日本スゲー本”は作者が被っている」と指摘されますが、要するにこうした本の作者は自分のメイン読者層が情弱であり、どういう餌を投げれば食いつくのかよく理解しているということですね。
最近はMMT解説本まで出してたりするのでホントわかりやすいです。
でも、いくら情弱とはいえ、15年も同じようなネタを食わされ続けていれば「あれ?なんかおかしくね?」と疑問を感じるものです。まあ文政権が爆誕してしまった韓国はともかく、明らかに中国は崩壊どころかさらに強大化してるし、なにより自分自身の暮らしはむしろ苦しくなってない?という具合です。
【参考リンク】ネトウヨ経済評論を見える化してみたら大崩壊!?
そこで、そうした本の著者たちにはこんなロジックが必要になってくるわけです。
「日本はすごいし政府がいくらでも経済成長させられるはずなのに、何かが足を引っ張っているせいでそれが出来ない」
その何かを情弱たちに納得させるのはとてもハードルの高い仕事です。というのも、たとえば「それは日本人が規制緩和で競争するのを嫌がっているからだ」というような常識的な回答は情弱たちには理解不可能だからです。
理解できるようにかみ砕いて説明したとしても、彼らに少しでも痛みを伴うようなものであれば拒絶反応を引き起こすことになります。
凄いはずの日本が勝てなくなったワケ。そして自分たちと全く無関係に責任を押し付けられる誰か。その難解なパズルを埋められるピースこそ、実は竹中平蔵という人物なんですね。
「構造改革の名のもとに哀れな派遣労働者を激増させ日本は貧しくなったのです。その証拠に、現に本人はパソナの会長職として甘い汁を吸っているじゃないですか!」
こうしてチンプンカンプンなロジックで氏とパソナを批判する匿名集団がネットに発生することとなったわけです。
以降、
竹中平蔵氏に関するネットでよくある勘違い
情弱のスパイラルに陥らないために
Q:「コロナで一極集中は緩和されますか?」
→A:「首都圏内部での限定的な逆流にとどまるでしょう」
Q:「やはり文句を言わない新人ほど評価されるものなんですか?」
→A:「バランスですね」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2020年7月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。