メルセデスベンツが日本で限定50台で販売するFCV(水素燃料電池自動車)とEV(電気自動車)の世界初プラグインハイブリット、エクステンダーモデル「GLC F-Cell」に試乗しました。
日本では、トヨタMIRAI、ホンダクラリティに続き3台目のFCV一般市場販売車です。世界初のFCV一般販売車として、2015年に販売を開始した初期型MIRAIは製造を終了し、今年中に販売されるとも言われる新型MIRAIが待ち望まれる状況下にあります。2019年東京モーターショーで日本市場への導入が発表されていたベンツGLC F-Cellが、いよいよ販売されるということです。
GLC F-Cellは、外観、内観とも、ベンツでも人気を博すGLCとほぼ同じスタイリングです。違いがあるとすれば、前部・後部のブルーのライン、サイドのF-Cellの文字とブルーライン、そしてタイヤホイールのブルーラインです。
車体自体は、ブラック、シルバー、ホワイトの3色があるのですが、個人的にはブラックか、ホワイト推しかな…。FCVと言えどもEV自動車なので、音は静か、トルクもあるのです。FCVとしては、水素タンク容量4.4Kg、70Mpの水素を3分で満充填、そして330Km走行可能。EVとしては、パーキングエリア等にある日本の高速充電は使えませんが、高電圧バッテリーで2時間で満充電、そして40Km走行可能。FCVとEVの走行距離を足すと370Kmとなります。
トヨタMIRAIは水素タンク容量が5Kgで、650Km走行できるので走行距離はMIRAIが上、パワーはGLC F-Cellが上と言ったところです。何と言ってもGLC F-Cellの利点は、買い物や子供の送り迎え等、近所での移動には、水素を使わずにプラグインで充電した電気のみを使えば充分であり、水素の消費はほぼ無いに等しいということです。
5年前、COP21がパリで行われた際、同時並行でグルノーブルにて、国際水素・燃料電池パートナーシップ(IPHE)が開催されていました。国会議員として世界で初めて招待されて、IPHEでスピーチを行ったのです。
グルノーブルは日本で言えば筑波学園都市的な研究機関が集まる環境の素晴らしい郊外の学術都市です。その学術都市にSymbioという車両改造のベンチャー企業がありました。EV車を改造し、フランスCEATechで開発されていた燃料電池を載せ、FCVとEVのエクステンダーを製造していたのです。
EVでは、走行距離が短く心配、FCVではスターション数が少なく、充填に不便。この両者の課題を解決していたのがシンビオだったのです。FCVは世界標準である70Mpを使わずに、35Mpを使用することによって、水素ステーション建設費を安価に抑える事が出来るのです。70Mpの方が35Mpに比べると圧力を2倍加えてあるので、走行距離が単純に言えば2倍長くなります。走行距離を増やすには、70Pmの方が良いのですが、タンクを始めとする関連機材の安全性をより高いものが要求され、高額になってしまうのです。
その意味では、35MpのFCVとプラグインEVの組み合わせが、トータルコスト、地球環境にとってもベストな組み合わせ、つまり現況では究極の自動車と思ったのです。視察時には、フランス郵政公社のルノー車を改造していました。後にフランス郵政公社の車両の多くが、このエクステンダーモデルになるのです。
二酸化炭素削減には、電気が何によってつくられたかを意識することは大切です。火力発電によってつくられた電気でなく、再生可能エネルギーや水素でつくられた電気によって動くEV。ガソリンやプロパンガスではなく、CO2フリー水素によって動くFCV。近隣移動など通常はEV自動車として、電気が無くなったら水素で発電するFCV自動車として、中・長距離を移動する。夜間、自宅で充電し、たまに少し離れた水素ステーションに充填しに行く。そんなモビリティと共に生活することが出来たら…。
メルセデスベンツから販売が始まったGLC F-Cellは、その理想に近づいたモビリティなのです。ただ、残念なのは蓄電池に充電された電気、燃料電池によって作られた電気を取り出すことが出来ないのです。つまり外部給電機能が存在していないとうことです。
確かに欧州では、日本のような地震、雨によるがけ崩れ、川の氾濫等の自然災害が多くないのかもしれません。よって、外部給電する機能を必要としていないのかもしれません。確かにトヨタMIRAIMも日本モデルには、外部給電機能がついていますが、海外販売モデルには、ついていません。災害以外でも、コンサート、バスケットボールゲーム、プロジェクションマッピング等で、発電機としての利活用もあります。
是非とも、次期モデルには外部給電器をつけてもらいたいのです。自動車の世界は、常に新たな進化を追い求めて発展してきました。
僕の理想は、EVとFCVのエクステンダーで、ライフスタイルを考えて35Mpと70Mpが選択できるという事です。その為には水素ステーションも35Mp、70Mp、両者とも充填できるようにしなくてはなりませんが…。
地球環境の為にも二酸化炭素の排出量を減らさなくてはなりません。水素エネルギー社会は正にその道を歩むものです。自動車も水素エネルギー社会をつくる大切な1つの要素です。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2020年7月14日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。