レジ袋有料化が始まって半月が経過しました。
海洋不法投棄の本質的な対策ではなく、レジ袋有料化となったこと。それが法制化ではなく経産省・環境省の通達で行われたことは大いに違和感があります。
さらには理由として「ライフスタイルの変革」しか挙げられず、「レジ袋をもらわない人を6割に」という目標設定をした結果、どの程度CO2を削減でき、環境負荷を改善できるのかも明確になっていません。
政府による官製価格、ある意味増税ともいえる大きな政治決定について、ぜひ環境大臣からしっかり説明して欲しいと思います。
(参考)プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン ― 経済産業省・環境省(2019年12月)
1. サーマルリサイクルの推進は無駄だったのか
実際は、プラスチックをプラスチックとして再成型するマテリアルリサイクルは非効率的で、発電の燃料にするサーマルリサイクルのほうが資源・エネルギー削減効果も、CO2削減効果も高いから、政府は苦しい説明しかできないのだろうと思います。
1990年代にダイオキシンが問題になってから国内では急速に焼却炉の高性能化が進み、現状ほとんどダイオキシンを発生さないゴミ処理が実現しています。
一方でマテリアルリサイクルはプラスチックゴミの材料での選別や洗浄など大きな手間とコストがかかります。
日本では諸外国に先駆けてサーマルリサイクルを推進し、ダイオキシンやメタンガスをほとんど発生させず、CO2と石油資源の消費を大幅に削減した社会を既に実現しているのに、なぜ今更問題になるのでしょうか。
(参考)いちばんエコなリサイクル手法はどれ? ― プラスチック循環利用協会
2. 方法の議論で目的を見失っていないか
例えば「海外ではサーマルリサイクルはリサイクルに含まない」などとありますがそれは定義の問題です。
必要なのはどういう方法でリサイクルしたかという「過程」ではなく、CO2や石油資源消費をより多く削減したかの「結果」が重要なのではないでしょうか。
また現時点でも多くのイートイン施設やファストフード店で利用者にゴミの分別を求めていますが、それもまた意味のないことです。
分別されたゴミを同じ袋にまとめているところを見たことがある人は多いと思いますが、既に日本全国でプラスチックゴミは分別する必要がなくなっているので、分別すること自体が非合理的です。
この点に関しては「飲み残しを捨ててもらうため」という説明もありますが、利用者の利便性を損なう理由としてそれらを結びつけるのは、かなり苦しいのではないでしょうか。実際は「分別していないと悪評が立つこと」を、利用者の利便性向上を上回るリスクとしてとらえているのだろうと推察します。
3. エンドポイントをしっかり議論してほしい
このような「結果」より「過程」を重視する国民性は、もしかすると学校教育の賜物かもしれませんが、必ずしも良いやりかたとは思いません。
そこには偉い人から定められた一つの「結果」に突き進むやりかたへの反省もあるようで、たしかに国や学者が言ったからといって盲目的に信じてしまうのも困りものです。しかし「結果」よりも「過程」が大事だというのは、結局いきあたりばったりということです。
本当に私たちがすべきことは、科学の表現では「適切なエンドポイントを設定する」ことです。
「結果」として求める目標値が本当に妥当か。違う尺度で評価すべきではないか。そういうところをしっかり議論して、説明できる。そして決定の経緯が議事録として適切に情報公開される。
これが令和の時代の、信頼できる政府のありかたではないでしょうか。
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