何故騙される「M資金」

岡本 裕明

M資金という言葉をご存知の方が果たしてどれぐらいいらっしゃるのでしょうか?多分、60代から上の方ではないかと思いますが、この戦後最大の詐欺話が連綿と続くのはなぜなのでしょうか?

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

M資金、それは戦後、GHQが日本の財産を没収し、それを日本の再興のために使うために巨額資金が眠っており、それは全て簿外であり、その実態はごく一部の人しか知らされてないものだが、その資金運用が必要なため、企業などに貸すことができる、といったところが大まかな筋でしょうか?

大まかな筋と申し上げたのはそもそもない話なので決まった話があるわけではないのです。ただこの資金については「まことしやか」という表現がふさわしく、聞けば聞くほどありそうな気がするお金なのであります。M資金のMはGHQ経済科学局のウィリアム マッカート局長のMではないかとされますが、マッカーサーのMじゃないのか、埋蔵金のMじゃないのか、とかいろいろ思うところはあります。

なぜ、今日、この古臭いM資金の話題を振ったかといえば最近、また引っかかった方がいらっしゃったからです。その人は「大戸屋」に敵対的買収を仕掛け、昨日は郡山の関連レストランで爆発事故があったコロワイドの蔵人金男会長であります。

蔵人氏は親がやっていた逗子の中華料理店から日本有数の飲食チェーンに成長させた立志伝中の方であり、またその過激な性格が時として話題になりました。社内報に「生殺与奪は私が握っている」に書くほどでありますが、この手の人ほど詐欺に引っかかりやすいのであります。そして蔵人氏の個人資金からM資金を引き出すためと騙され、31億5千万円をとられました。犯人は6-7月にかけて逮捕されたごく最近の話であります。

何故騙されるのかといえば自信家が「やっぱりその手の話は俺のところにくるんだな」と自分の地位と名声がくすぐられるからなのであります。

面白いところでは俳優の田宮二郎が自殺した遠因はM資金詐欺とされます。全日空のロッキード事件の遠因は大庭哲夫社長(当時)がM資金に引っかかり書類にサインをしたことを児玉誉士夫にゆすられ、大庭が社長を追われ若狭得治が社長となりロッキード事件につながっていきます。

最近ではローソンの玉塚元一氏がM資金で引っかかり、それが理由でローソンの会長を辞めています。朝青龍はM資金からモンゴル復興資金を出すという理由で引っかかっています。へぇと思うのは横浜で開催予定だったイベントがM資金が調達できず、突如中止となり、剛力彩芽さんらのギャラ未払い事件というのもあります。

私がゼネコンオーナーの秘書の時もありました。騙されることはなかったのですが、オーナーの気持ちは揺さぶられていたように感じています。東大を優秀な成績で卒業後、大蔵省入省、竹下元首相との蜜月な関係はいかにもM資金話が持ち込まれやすい状況だったと思います。ずいぶん前の話なので記憶があいまいですが、確かスイスにM資金が眠っているという話が持ち込まれた記憶があります。勿論そんな話はないでしょう。

余談ですが、経営者ほど孤独なもので特に創業者や創業家ほど誰も信じず、自分と身内だけで固めるものです。コロワイドの蔵人会長も同様です。そんな方は案外占いとかに引っかかるわけです。私が特に印象的だったのはスーパーマーケットで名をはせたヤオハンの和田会長で和田氏のお母さまが方向占いで出店する方角を決めており、和田会長はそれを忠実に守っていました。

私の元ボスのゼネコン会長もお母さまの占いで海外出張の日にちなどを決めることも多く、賢い人ほど「何かにすがる」のかなと思ったものであります。そういえば積水ハウスがM資金ではないですが、詐欺グループに騙されましたがあの会社も騙されやすい体質にあったのかもしれません。それゆえにその後の会長派と社長派の激しい対立が表面化したのだと思います。

M資金詐欺話が今でも通用するとはびっくりですが、逆にもう過去の伝説話になりつつあるからこそ、それなりの年齢で社会的地位があり、圧倒的決定権がある方にスーッと持ち込まれるともいえるでしょう。

恐ろしい話です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年7月31日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。