被災地の足を引っ張る被災者たち - 松本孝行

松本 孝行

 8月22日~8月29日までの1週間、東北へ行って参りました。貧乏な私は青春18切符でできる限り安く移動し、宿もカプセルホテルで、節約に節約を重ねた東北ボランティア旅行になりました。

 私が訪れたのは宮城県なのですが、8月末まで仙台駅にブースを設けてボランティア情報を掲載していた、ボランティアインフォを頼りました。この団体は地元で災害ボランティアを頑張っているNPOや市民団体を紹介している団体です。皆様もボランティアに行く際は利用されるといいと思います。

 さて、数日の間ですがボランティアに参加していて気づいたことは、ボランティアが不足していること、そして被災者が被災地復興の足を引っ張っているんじゃないか?ということです。


 私が話を聞いたどの団体でも「ボランティアが足りない」ということをおっしゃっていました。たしかに、作業量などを考えると、圧倒的に足りていないと私も感じました。そしてそれと同時に「地元の人達はボランティアに来ない」という声をよく聞いたのです。

 確かに私が活動していた数日間、お会いしたボランティアの方々は東京・埼玉・富山・石川・大阪・横浜・福岡…といった、被災地以外の方々ばかりでした。まだ震災から半年も経過していませんから、心の傷が癒えていないという被災者もいるでしょう。加えて高齢化した地域ではがれき処理や側溝掃除などができないということもあります。こういう事情は当然考慮されるべきですし、無理矢理活動を強制させてはなりません。

 しかし仙台にいる人達となれば、話は別です。震災後、仙台駅はまったく被災した傷跡が見えないほど、中心部は復興しています。夜は国分町で居酒屋などの呼び込みも多く、若い人達で賑わっています。バスやタクシーもほぼ通常通り運行していますし、仙台の中心部はすでに復興しています。にもかかわらず、仙台からボランティアに来る人は少ないのが現状です。

 地元の方と話していると、被災地の方々はボランティアに対して大きな温度差があると感じました。私が仙台の沿岸部でボランティアをさせていただいた時、震災直後からボランティアをしていたという、地元仙台に住む方とお話をさせて頂く機会がありました。この方はずっとボランティアをしてきているのですが、「回りの友人や地元民からは『なんでそんなことをしているんだ?』と言われ、まるでボランティアをしている自分の方がおかしいと言われているような感覚」だと話してくれました。

 地元の方々が復興に尽力しているボランティアの方々に対して「何してるの?」というような冷めた目をしている限り、被災地の復興などありえません。ボランティアというのは主役ではなく、むしろ脇役でしか無いのです。復興のための主役は被災地の方々です。それをお手伝いして、復興を加速する役割がボランティアの役割ではないでしょうか。被災した方々が主導し、それを日本全国からやってきたボランティアが支援するというのが、正しい形だと思います。

 被災地の方々が主導しなければならないのは、政治でも同じです。被災者の方には松本龍元大臣の発言を支持している方も見受けられました。支持しているのは「被災地が知恵を出せ」という部分で、市町村長・知事と比較して相対的に支持できるという意味です。被災地の市町村長や知事は、全くリーダーシップを果たしていない、智恵を出していない、中央へのお願いだけしかしていない、という風に考えている人も、被災者の方には少なからずいるようです。

 実は阪神大震災の時も似たようなことがあったそうです。被災者が支援慣れしてしまうという現象です。「支援されて当たり前」という考えになり、自立が遅れてしまったといいます。現在、避難所に住んでいる方々の中にも「これは俺の欲しい物じゃない」と支援物資に注文を付ける人もいるようです。確かに被災した方々に支援の手を差し伸べるのは当たり前ですが、いつまでも支援される側にいるわけにはいきません。どこかで自立しなければならないのです。

 今、被災地に求められているのは自立なのかもしれません。いつまでも支援されることを当たり前としていては、被災地の復興の足を被災地自らが引っ張ることになりかねません。県外ボランティアだけでは限界があります。ですから、被災地の方々が復興に主導的役割を果たすことこそ、震災からおよそ半年経過した今、必要なことではないでしょうか。