地球に隕石が衝突せず、恐竜が絶滅を免れた世界。恐竜のアーロは、兄弟と比べて体が小さく、怖がりの甘えん坊だ。ある日、激しい嵐に遭い、大好きな父親を亡くした上、濁流にのまれて見知らぬ土地にたどり着いてしまう。ひとりぼっちのアーロを助けたのは、言葉を話せない人間の少年スポットだった。体は小さいが勇気があり、懸命にアーロを守ろうとするスポットに、アーロは次第に心を開いていく。正反対の二人は、アーロの家族のもとへ戻る旅に出るが、そこには数々の試練が待ちうけていた…。
ディズニー/ピクサーの新作アニメ「アーロと少年」で描かれるのは、恐竜が生き延び文明と言葉を持つ一方、人間は話すこともできないという架空の地球。つまり世界を支配しているのは人間ではなく恐竜(動物)なのだが、その“もしも…”の世界は、なんと美しく輝いていることか!その美しさを表現するのに、最高レベルのCGが使われている。ITやCGの難しい技術はわからなくても、実写と見紛うほどの映像の美しさは一目瞭然だ。濁流や清流のリアルな水の表現、草原に輝く蛍の光、幻想的な雲、一斉に飛び立つ鳥の群れ。リアルにしてファンタジックな映像美は、この物語のもうひとつの主人公が自然そのものであることを教えてくれる。
この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。