私は茂木外相にがっかりしています。キャリア的には東大、ハーバードからマッキンゼーというゴールデンルートで英語もできるのでしょうけれど外務大臣としての力量を発揮できないのであれば交代していただくしかないと思います。どうせなら外務大臣に安倍元首相を持ってくる仰天人事もアリだと思います。
茂木外相の直近の失敗は二つ。一つはドイツ慰安婦像問題、もう一つは王毅外相との尖閣をめぐるやり取りであります。
ドイツ、ベルリンの慰安婦像問題については本ブログで複数回、取り上げていますので既に事の成り行きをご存知の方も多いと思います。現地韓国人団体が公有地に慰安婦像建立を行い、これを差し止めようとした日本側は政治力を使い、茂木外相までその陳情を行いましたが、逆にそれが火に油を注ぐ形となり、裁判沙汰になります。判決はまだですが、地元のミッテ区の区議会で決議を行ったところ、像の維持賛成24、反対5票と圧倒的差となっていることが日本のメディアで小さく報じられています。
もちろん、裁判の判決を待たねばなりませが、周辺の空気をうまく取り込む下地作りができなかったこと、ベルリンの日本人会から慰安婦像を支持する旨の文書が出ていたことなどそもそも「戦う」体制になっていません。
在外公館はもともと地元の日本人との深い接触、情報収集を通じて現地の状況把握を行い、対策や施策を行う役目もあるのですが、コロナもあるのか、まったくその動きは止まっています。ただ、地元と在外公館の関係維持も難しいのが現状です。日本人コミュニティは高齢化、海外在住の日本人はドライで自己中心的であること、コミュニティ活動に時代錯誤感があり、不活発さが顕著になり、グリップが効かせられない状態になっています。
ベルリンの慰安婦像建立を阻止するための現地日本人コミュニティの土壌が十分ではなく、突然の事実にあたふたとして、茂木外相が政治的に上から目線で反対と言っても意味は全くありません。もう少し言えばなぜ、こんな稚拙なことになったのか、外務省の体制そのものにも問題があるようにも思えます。
次に尖閣に関して王毅外相とのリアル会談の件です。「最近、一部の正体不明の日本の漁船が釣魚島(尖閣諸島)のデリケートな海域に侵入している。中国はそれに対して必要な対応をするしかない。この問題に関する中国の立場は非常に明確で、われわれは今後も引き続き中国の主権を守っていく」と王毅外相に会見で言わせ、それに日本側は反論もなく終わっている状態に唖然を通り越し、「外務大臣はニコニコしていればよいのか?」と思わせるほどでした。
王毅外相のこの挑発は非常に大きな意味がありました。日本が常日頃、日中間の最大のトゲの一つである尖閣問題についてどの程度のクッションを持っているのか、王毅氏はブラフをかませたとみています。ところが面と向かって反発すらなく、王毅外相は高笑い、習近平国家主席はさぞかし喜んだことでしょう。会談後、しばらくたって日本側は「いやそうではない」といった言い訳が出ていますが、王毅外相の顔つきからは中国の完勝だったとみています。
私は戦争を煽ることは一切しませんが、今、中国が突然、防御のない尖閣を実効支配したらどうなるのか、想像してみました。多分、全く抵抗なく、明け渡すことになるのだろうみています。そしてお決まりの「外交筋を通じて厳重に抗議」であります。ほとんどこれが無意味なのは外交を知っている人はお分かりだろうと思います。
一番心配なのはアメリカの政権が変わった際、日本への対応は今までとは変わる点です。トランプ政権時代は彼自身が強面だし、安倍元首相との圧倒的な連携で日本は実力以上に大きく、強く見せることができました。今の内閣は申し訳ないですが、安倍内閣と比べ物にならないほど小粒です。コロナ対策すら十分にできず、小池百合子都知事にすらやり込められる体たらくです。それが中国や韓国を相手に外交で戦えるのか、アメリカの新政権と渡り合えるのか、と言えば私の見立てでは期待薄であります。
私のこの意見を一部の方は「右翼で保守の頑固じじぃ」と思うかもしれません。それは「じじぃ」を除き全く違います。私は海外に居住しながら、あるべき信念を貫くことの意味を学び、それを自分でもできる限り実践してきました。日本国が長い歴史の中で守るべきこと、やるべきことは流行にとらわれるものではなく、永遠の枠組みの中の責務であります。奇妙な迎合主義は日本が他国の領土になるようなものでロシアも中国も韓国も喜んで分捕り合戦をするでしょう。
日本は戦闘機や武器を大量に購入しています。しかし、それは最後手段であり、脅しの一つでしかありません。国を守るのは政府でもないし、自衛隊でもありません。本当に必要なのは日本人のメンタリティがもっと強くなること、そして外交を強化すること、この二つに尽きるのです。
その為には強いリーダーシップをもう一度取り戻す必要があります。カリスマ性を持つ人材、そしてそれに呼応できるチームと国民の強いサポートをどうにかして作り上げなければ日本の将来は危ういと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年12月3日の記事より転載させていただきました。