今週のメルマガ前半部の紹介です。先日、中西・前経団連会長が逝去されました。5月に任期半ばで辞任されたばかりなので驚いている人も多いのではないでしょうか。
筆者自身は面識ありませんでしたが、人事的には常に重要な方向性を提示し続けてこられた方だった印象がありますね。
というわけで、今回は氏の人事制度における先見性についてまとめたいと思います。それは今後の日本の労働市場を予測するうえでも重要な指標となるはずです。
日立で脱・年功序列、ジョブ化の手ごたえは掴んでいた
2000年前後より、それまで長く年功序列制度を維持し続けてきた日本企業が、相次いで人事制度改革に乗り出しました。“成果主義”とか“目標管理”というやつですね。
ホント、業界関係なしに「今やらないと時代に乗り遅れるゾ」みたいな勢いで各社右向け右していた印象があります。
その背景ですが、利益が安定して上がり続ける時代が終わり、人件費を毎年ちょっとずつ積み上げていくスタイルから一定水準に抑制する方向にかじを切る必要があったためです。
今までは「ちゃんと真面目に言われたことさえやっていれば毎年コツコツ昇給させてもらえた」わけです。でも、これからはそうじゃなくて、昇給やボーナスにいろいろと差がついて、これまで通り貰える人と貰えない人が出現することになります。
当然ながら会社としてはその“基準”を従業員に対して示す必要があります。それが成果主義であり、目標管理だったというわけですね。
ところが。当初導入された成果主義や目標管理制度はほぼすべての企業で失敗し、形骸化してしまいました。
理由は、そもそも「業務範囲が定まっておらず、その都度会社から指示された業務をこなすメンバーシップ型の組織」では、個人が査定の半年も前に目標を立てて裁量をもって取り組むなんてムリだったからです。あれはジョブ型の評価ツールなんですね。
そのことに気付いた企業から、いろいろと試行錯誤がスタートして今に至ります。そこからは完全に企業によりますね。今でも会社に言われて仕方なく目標面談とか惰性でやっているけどまったく無意味だ、という話はよく耳にします。
そんな中、目標管理制度をグローバルパフォーマンスマネジメント制度として再編し、管理職をグローバルグレード制度として事実上のジョブ化したのが、中西体制の日立でした。
当時からすでに「横並びを辞めて個人ごとに評価をビシっとするのであればジョブ化は不可避だ」と見抜いていたわけですね。またジョブ化するだけでなく、一千社ちかくある世界中のグループ企業の人事制度を一元化したわけで、日本企業の一つの到達点と言ってもいいでしょう。
ここ10年くらいに設立されたような新興企業ならともかく、グループ従業員数30万人超の歴史あるマンモス企業でこれが出来たことは凄いマネジメント力だと筆者は考えますね。
以降、
モノ言う経団連会長
日本型雇用が行き着く先
Q:「当社のジョブ制度をどう評価されますか??」
→A:「ジョブ化は2パターンありますね」
Q:「女性の総合職採用を増やすには?」
→A:「逆転の発想で『男性の働きやすい会社』をアピールしましょう」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2021年7月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。