難民受け入れが欧米のアフガン政策失敗の原因だ

松田 学氏とアフガニスタン問題について議論した。キモになるのは、アメリカがアフガニスタンでなぜ失敗したかというと、難民を受け入れてきたからだというのが私の説だ。

アフガニスタンでタリバンを嫌がる人を欧米が難民として受けるものだから、民主派がどんどん減ってきてしまった。難民、しかも経済難民まで受け入れるという考え方を変えない限り、だめだというちょっと思いきった視点だ。

そんなという人もいるだろうが、たとえば、中国の共産党政権を嫌だと云って出てきた難民を安直に周辺諸国で受け入れようものなら、中国から民主派がいなくなってしまう。

私の話は下記の動画を見て頂きたいが、松田氏が要旨をまとめてくれているので、それに私が少し手を入れたものを下述する。

これも参考にして動画をご覧頂ければ幸いだ。

『米軍撤退、アフガニスタン問題を歴史的経緯から探る』
(ゲスト:歴史家・評論家 八幡和郎氏 2021年8月31日収録)

【私の発言の要旨】

  • アフガンという国は歴史的に、そんなものはなかった。
  • バーミヤンの石窟や大仏、世界最大の世界遺産がタリバンにより爆発された。
  • シルクロードでインドと中国を結ぶ道、玄奘三蔵は中国からインドへわたったが、それはアフガンの北から入り、南へ、バーミヤン、カブールを通り、カイバル峠を通ってインドに入った。
  • 帰りはパミール高原を超えて、新疆ウイグルの南のほうから帰った。
  • ガンダーラ文明はパキスタンからアフガンの地域で栄えた。
  • 北部は、ヘラート州、ホラサンと言った、中央アジアの歴史によく出てくる。
  • チムール、モンゴル帝国、チャガタイハン国、その武将の中にチムールさんがいて、これがチンギスハンの子孫を従えて帝国を作った。
  • ムガール帝国、あれはチムールの子孫の国。ムガール帝国の初代であるパープルの墓はカブールにある。
  • 文明の十字路。
  • アレキサンダー大王とも縁がある。タリバンの本拠地のカンダハル、これはアレキサンドリアがなまったもの。
  • アフガンに住んでいる人は、民族も言語も一致しない。
  • パシュトゥーン人、山岳民族、そのほとんどはパキスタンの西部に住んでいる。
  • これが支配民族。
  • パキスタンにしてみたら、自国の西部の少数山岳民族が作ったのがアフガン。
  • イランはロシアの影響が強く、英国が南から進出し、ロシアと英国の勢力圏の緩衝地帯をアフガニスタンとしておこうということで出来た国。
  • 洞窟がたくさんあり、いくらでも隠れられる。
  • 難攻不落。
  • イラクは砂漠で平地、米軍がいくらでも戦車で驀進できる。
  • しかしアフガンは、伊賀甲賀の忍者の地のイメージ。
  • 英国がいなくなったあと、国王がいたが、追い出され、ブレジネフが衛星国にしようとしたら、タリバンに抵抗され、米国がタリバンを使ってロシアを追い出したが、武器を手にした彼らがアルカイーダやイスラム国を作って、抑えきれなくなった。
  • 武器が横流しされていた。
  • 自分を応援している勢力に武器をあげても汚職が蔓延しているから武器がとこかに行ってしまう。
  • アフガンの人たちがなぜタリバンに支配されていいと思っているかが問題。
  • 米国の失敗の理由は、アフガンから難民を受け入れていたから。
  • タリバン支配下のアフガンで、女性の権利が圧迫されているなら保護しなければならない。
  • しかし、これまでは親米国政権、なのに、そこから逃げた人を米国はなぜ受け入れたのか。馬鹿げてた。
  • これからアフガン難民を受け入れる?
  • タリバンは外へ出ていってくださいと言っている。
  • そうすればアフガンはタリバンのものになる。
  • 政権にとつては厄介払いしたい人を米国が難民として受け入れているのは変なこと。
  • 香港についても同様。香港から英国が何百万人受け入れると言っているが、そうなると香港は民主化しない。
  • その国で有為な人材には、今の政権に抵抗してもらわなければならない。
  • まして、アフガンが親米政権だったときに、国を出ることを奨励する理由が私には分からない。
  • この愚かな事態は、第二次大戦後の東西冷戦のときの成功体験を間違って適用したもの。西側は、逃げてきた人は誰でも来てください。
  • それは戦後だったので労働力不足だったから。
  • 自国の働く人たちが兵士としてたくさん死んでいたから。
  • 東欧からみると、労働力が出ていくのはいちばん困ることだった。
  • フランスでは第一次大戦のあと、ウクライナ人が大量に来ていた。
  • ロシア革命でウクライナから大量に入れて、フランスの石炭産業は盛り返した。
  • 今はたくさんウクライナ人がいて、政治勢力が大きい。フランスの首相まで出した。
  • 西ドイツでは東ドイツからの亡命者も来て欲しかったし、逆に東独は出したくなかった。労働力だから。
  • しかし、いまはそんなことはない。
  • ロシアはソ連と違って、我慢できないほど非人間的な統治はしていない。
  • にも関わらず、民主派を西側が受け入れるから、プーチンはますます強くなる。
  • 中南米も金持ちが出て行ってくれれば、革命政権にはありがたいこと。
  • アフリカも、クーデターが起こっても、より民主的な人をフランスが受け入れるので、民主派はやっていけなくなっている。
  • ドイツの経済界が外国人労働者をほしがっているということもある。
  • 米国のGAFAもそう。
  • カリフォルニアやNYで、働く女性にはベビーシッター。
  • それは不法移民が多い。
  • IT企業に務めるリベラルな白人が不法移民を安い労働力やベビーシッターに雇った。
  • 彼らがいなかったら、ベビーシッターはすごく高くなっていた。
  • 移民とインテリの連合軍が米国の民主党。
  • それに対して、プアホワイトの立場に立つのが共和党。
  • 欧州も同じ状況。
  • かわいそうだと思うなら、自分の国をしっかり作る、民主化のために戦うのを援助するのが筋。
  • 日本は兵隊を出していないと言われるが、日本はアフガンの国づくりをしようとする人にお金を出す政策をしてきた。
  • 殺された中村さんもそうだっが、現地でがんばる、正しい。
  • もし、中国が崩れた場合、民主派が難民として日本に来たいと言ったらどうするのか。
  • 欧州なら全体の人口比を変えるものではない。
  • しかし、人口の10%でも1億人の難民が日本に来る。
  • 日本は欧州とは同じポジションをとれない。
  • 日本が乗っ取られてしまう。
  • 政治勢力になる。
  • 経済難民、かつて難民は地位や財産を捨ててきていた。
  • 良い生活を犠牲にして、政治的自由を求めて難民になった。
  • 今は、難民になるともとよりよい生活。
  • それを難民というのか。
  • タリバンが気に食わないというだけでは、受け入れないということにしていかないと、世界じゅうが、ならず者に支配される地域になっていく。
  • 自国でがんばってくれと言うのが温かい対応。
  • それは日本が声を出して言うべきこと。
  • アフガンで心配なのはテロの温床になること。
  • 難攻不落な場所だから、えらいことになる。
  • だからこそ、真っ当な人がアフガンで頑張ってもらうようにしたい…。
  • 難民受け入れは、結果として、極右の台頭にもつながっている。
  • それはリベラルな人たちの身勝手な考え方がもとにある。両方で国を悪くしている。
  • 難民たちはリベラル政党に投票する。
  • 日本は今までの日本のやり方を貫いていくべし。

【松田学氏のコメント】

タリバンに制圧されたアフガニスタンとはどんな国なのか。歴史的にみれば、そこは文明の十字路。八幡和郎先生のお話を聞いていると、世界史で聞いたことのある懐かしい名前が次々と。

他国にとって難攻不落の地であるアフガンは、地政学的な十字路でもあり続けてきたようです。確かに、ソ連もそうですが、大国の思惑はいつもアフガンで潰えてきました。

では、米国はなぜ、今回のような失敗をしたか…。

意外な答が返ってきました。それは、難民を受け入れてきたから。

日本は価値観を共有する西側諸国の一員としてアジアで人権を掲げる国にならねばならない、それにしては、日本は難民受け入れが少ない国だと国際社会の中で見られているかもしれません。

しかし、難民を受け入れないことは、実は、出身国にとっても、本人にとっても、日本にとっても、みんなにとってありがたい筋の通った正しい姿勢である…。

詳しくは、この対談番組をご覧いただければと思いますが、考えてみれば、途上国に対する日本の支援は、その国の自力更生(字義どおりの本来の意味での)を促すものであり続けてきたように思います。

これは、支配によって自立できなくする欧米植民地秩序に対抗して日本が打ち出した大東亜秩序もそうだったと思いますし、アジア諸国に民族自決を促し、新しい国際秩序の形成につながったのも大東亜戦争の結果でしたし、戦後の日本のODAも、他の先進国のような、どこに回るかわからない、やりっぱなしのタダガネではなく、円借款が中心でした。

借款なので返済が必要、これは一見、相手国には厳しいように見えますが、返済が必要だからこそ、その国自らが産業を振興していかなければならない。

日本が戦後のアジア諸国の発展に大きく貢献したのも、この自力更生の原理だったように思います。

実は、各国による難民受け入れが、先進国ではリベラル革新の勢力を強めさせ、極右をも台頭させているだけでなく、出身国の民主化を妨げ、世界中を決してよくない方向に導いている…

この八幡氏の切り口には、傾聴に値するものがあると思います。