野党共闘に思う

先週木曜日の衆議院解散を経て、事実上の選挙戦に突入しています。今回一つ注目されるべきは、所謂「野党共闘」の動きでありましょう。これまで当ブログでも折に触れて指摘してきたことですが、本件につき以下改めて「政治の三要素」より述べておきたいと思います。

中国古典流に言えば、政治は三つの要素に分かれます。第一に政治の政に道と書く「政道」というもので、時代劇などを見ると「天下の御政道」というようなことがよく出てきます。政道とは正に政治の根本中の根本であり、その国の君主なり皇帝なりが行う政治の思想・哲学に当たる部分です。

そして、その政道を踏まえ活用しながら如何に具現化・具体化して行くかが「政略」で、「政策」に繋がって行くわけです。一番大事なのは言うまでもなく思想・哲学であり、政道の違いを象徴しているのが各政党であります。政党は本来政党たる役割をきちっと果たすべく、政道・政略を踏まえた政治を実現して行かねばならないのです。

例えば14日、安倍晋三元首相は次の通り述べておられたようです――立憲民主党が、安全保障政策で全く違う考えの共産党と協力するのは、選挙のためだけの『談合協力』だ。もし政権を取れば、日米の信頼関係が根底から崩れ、そういう政権を許すわけにはいかない。

現下の野党共闘を見るにつけ、「消費税減税」や「脱原発」等の表層的な政策レベルでの擦り合わせに終始しています。もっと言えば、民主党・維新の党の合流(16年3月)以後を見てみても、野党各党は近視眼的な党利党略に基づき離合集散を繰り返しています。

即ち、野党間で行われるのは常々政策協議だけであって、最も枢要な要素である政道・政略についての議論が一切なされていないのです。しかし、その程度の野党共闘であっても今回結果として、自由民主党に属する優秀な議員がその資格を喪失し、日本の将来に禍根を残すかもしれぬ情勢に対し、私は危惧の念を抱いています。

例えば東京都第23区の場合前回4年前の得票数に鑑みるに、立憲民主党・共産党の候補者一本化によって、自民党衆議院議員の小倉將信氏にとっても厳しい戦いになるのではと心配しています。同君は、人物・見識とも申し分なく、将来を嘱望されている若者であります。対立候補である伊藤俊輔氏の政党遍歴が、日本維新の会→希望の党→国民民主党→立憲民主党といった具合であるにも拘らずです。

政道なき政治は、退廃に向かうより他ありません。それは、過去が証明している所であります。来る31日、我々は政治の三要素とりわけ政道・政略の相違に思いを致し、我々の貴重な一票を行使すべきではないかと思うものです。


編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2021年10月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。