香取慎吾の結婚相手の「一般女性」は変な日本語です

「一般男性と結婚」にも違和感

タレントで俳優の香取慎吾が「一般女性と結婚」との発表がありました。フリーアナウンサーの加藤綾子(通称カトパン)の時も「一般男性と結婚」でした。この「一般女性」」や「一般男性」は妙な日本語です。

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タレント、有名人が結婚する場合、同業のタレントだとすると、「歌手の○○さんと結婚」とか「俳優の○○さんと結婚」とか、職業を紹介します。

男性タレントの場合「女性タレントの○○さんと結婚」とか、女性タレントの場合「男性タレントの○○さんと結婚」とか言いません。「女性」「男性」の表記をわざわざしていないはずです。

相手が同業者でない場合でも、「実業家と結婚」「プロスポーツ選手と結婚」「医師と結婚」のように、肩書を書きます。

2005年前後から、「一般女性と」とか「一般男性と」とかの表記が目立ってきたそうです。タレントや有名人の相手方が無名であったりすると、週刊誌やテレビの取材攻勢を受け、慣れていないので迷惑を受ける。

そこで「ここから先はプライバシーに触れるから、取材は立ち入り禁止」「追いかけないで下さい。そっとしておいて」の思いと込めて、「一般女性」「一般男性」を使いだしたとの見方があります。

本来の日本語の持つ「一般」の意味とは、込められているニュアンスが違います。本来の「一般」の意味は、「特殊な事物ではない」「広く全体に共通して認められている」などでしょうか。

「一般の市民」は「特別でない普通の市民」の意味です。「一般の人」は「特別の人でなく、広く普通の人」ですか。「一般に公開する」は「広く世間に公開する」です。

「・・・が一般的な傾向である」は、「広く社会全般に認められる傾向である」です。葬儀場の受け付けで見かける「一般」の表現の意味は、「会社関係、親戚、友人関係以外の一般の人」です。

「一般女性」「一般男性」と、本来の日本語の「一般」に共通項があるとすれば、「著名でもなく、特別な分野、職業の人ではなく、世間一般にいる人」ですか。「だからあれこれ探ったり、詮索しないで」となる。

そうであっても、私はずっと「一般女性」「一般男性」には、違和感を持ち続けてきました。

単に「香取慎吾が結婚」、「加藤綾子が結婚」でいいと思います。だんだん同性婚も増え、芸能人の結婚相手が異性とは限らない。「男性と女性が結婚」とは限らないトランスジェンダーの時代を迎えました。

その場合、性別の表現はとって、「タレントの○○が一般人と結婚」とするか。それもおかしい。今のうちから「○○は結婚」で通したらどうか。

ジェンダー意識(男女の性区別、性差)が高まってきています。年末のNHK紅白歌合戦では、今回から「紅組司会」「白組司会」という表現はやめて、女性、男性ともに単に「司会」にすることにしました。

歌手やタレントを「紅組」(女性)、「白組」(男性)という色分けし、対抗するということの意味自体も問われています。すでに「男女混合グループ」も存在しています。男女という二分法は通らない。

「男女対抗歌合戦」の「男女対抗」の時代は終わっていく。結婚相手の肩書に「一般」を付けたとしても、「女性」「男性」の性別を表記することはなくなっていくのではないでしょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年12月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。