1. 共働きする世帯の急増
前回は、日本の家計(2人以上の勤労世帯)について、資産と負債のバランスを可視化してみました。実はどの年代でも負債(多くは住宅ローン)が増えているという興味深い変化が見て取れました。
今回はこのような家計の変化について、どの部分がどの程度進んだのか確認していきたいと思います。
図1が共働きの割合となります。
40歳未満の若年世帯を中心に、大きく共働き率が増加していますね。世帯主の収入が低下している事も大きいと思いますが、持家率の増加も関係ありそうです。また、高齢世帯でも共働き率が大幅に増加しています。
2. 若年世代で持家率が急増している!
続いてポイントとなる持家率についてもチェックしてみましょう。
図2が持家率のグラフです。
どの年代でも持家率が上昇していて、平均で68.4%から79.0%に上昇しています。
特に40歳未満での若年世代での上昇が大きいですね。30歳未満の世帯で19.7%→33.6%と7割ほど増加しています。30代も46.0%→65.0%と4割ほど増加です。
共働きが増えた若年世代で特に持家率が増加している点がポイントと言えそうですね。
図3が住宅ローンを支払っている世帯の割合です。
持家率が増加している若年世代で大きく増えているのはわかりますが、実はそれ以上の年齢層でも増加しています。
以前ほど頭金やボーナスでの繰上げ返済が多くなく、住宅ローン返済が残ったままの世帯が増えているという事が窺えますね。
特に70歳以上の世代でも増加しているのが気になります。
図4が家計収支の「土地家屋借金返済」の金額です。
この項目は実支出には含まれません。また、各年代の世帯平均値ですので、ローンを抱えている人の返済額の平均値ではありませんのでご承知おきください。
やはり、持家率が上昇している40歳未満の若年世代で大きく増加しています。
40代がやや減少しているのは気になりますが、それ以上の世代では増加していますね。
やはり、ローン残高が以前よりも多く残りがちな傾向なようです。特に70歳以上の世代では金額は少ないながらも倍増しています。高齢になってもローン返済が終わっていない世代が増え、その結果共働きが増えているようです。
3. 実は若い世代の子供の数は増えている!!
それでは、少子高齢化が叫ばれる中、子供の数はどのような変化があるのでしょうか?
図5が18歳未満人員のグラフです。つまり、同居する家族の中で18歳未満の人(基本的には子供)の数を表します。
30歳未満の世代で0.93人→1.00人、30代で1.51→1.65人とわずかながら増加傾向のようです!
一方で40代は1.54人→1.48人と減少しています。50代は0.31人→0.49人です。
18歳未満の人数なので、晩婚化によりこの年代で18歳未満の子供の割合が増えている可能性もありますね。
この統計データはあくまでも2人以上の勤労者世帯で、基本的には結婚している世帯が前提となります。少子化が進んでいる事は事実ですが、このように結婚している世帯では子供の数はむしろ増加傾向であるという事は非常に重要な事実ではないでしょうか。
逆に言えば、それだけ非婚化が進んでいるという事も考えられますね。
そして、なぜ結婚しないかと言えば、価値観の多様化もありますが、経済的な不安などから結婚しない人が多い面も大きいようです。
【参考記事】 はたして結婚は贅沢なのか!?
4. こづかい激減という悲しい現実
日本の家計では、このように若年世代の持家率、共働き率の上昇が顕著にみられます。
これにより、確かに実支出外のローン返済が増えているという面が考えられますね。
ただ、前々回見た通り、それ以上に日本の家計は支出を絞っているようです。
そのうちで大きな項目が「こづかい」と「交際費」です。
図6がこづかい(使途不明)のグラフです。
なんと全ての世代で激減しています。。。合っているかどうか何度も確認したのですが、間違いはなさそうです。
実際には「こづかい制」の家計が減っているのかもしれません。
ただ、他の支出がそれほど大きく変化がない中で、こづかい的な用途の支出がこれだけ減っているのも事実ですね。
支出の中で絞れる部分は絞っている、という印象を受けます。
図7は交際費のグラフです。
こちらも全年代で激減しています。特に高齢層で顕著ですね。
もちろん2021年はコロナ禍の真っ最中ですので、一層交際費の減少が目立ったとは思います。2019年のデータも確認してみましたが、大きく減少している傾向は同じなようです。
やはり削減できそうな部分から削減しているようですね。
もちろん、サブスクサービスの普及で都度課金から一括払いとなり、トータルとして支出が減っている面もあると思います。あるいは、無料や安価で楽しめるサービスなども増え、余暇の楽しみ方が変化しているかもしれませんね。
特に携帯電話やSNS、オンラインミーティングの普及でわざわざ会いに行かなくても、自宅で手軽にコミュニケーションできるようになった結果、それにかかわる支出が不要になったという面もあるかもしれません。
家計の変化は大きく次のような傾向にあります。
・ 世帯主の収入減少
・ 共働きの増加
・ 世帯収入の大幅な増加
・ 社会保険料等非消費支出の増加
・ 消費支出の減少(こづかい、交際費など)
・ 特に若年世代の持家率とローンの増加
家計の消費が大きく減少している要因の一つは、持家率の増加によって住宅ローン返済が増えている事が考えられます。ただし、それ以上に家計収入が増えているにもかかわらず、消費支出が減少しています。
世帯主の収入が減り、将来不安もある中で、絞れる支出は絞ろうというマインドが働いている可能性もあるかもしれませんね。何とか我慢をしながら、貯蓄を増やそうとしているのかもしれません。
少なくとも消費を増やす実質的な余力は、この層では増えているように思います。それをさらに消費に向かわせるためには、まずは世帯主の所得向上と安定した雇用という、将来への安心感が必要なのかもしれませんね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年3月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。