1. 停滞する家計の負債
前回は、家計の金融資産について、各国比較してみました。
日本は1990年代に極めて高い水準に達していて、それからは少しずつ増加傾向ではありますが、他国と比べると非常に緩やかな傾向であることがわかりました。
企業の負債が増えず、信用創造によるお金の創出が緩やかなため、家計に蓄積される金融資産が限定的となっているように思います。
今回は、家計の負債にフォーカスしてみましょう。
家計の負債の多くは、住宅ローンと考えられます。
図1が家計の負債の推移です。やはりアメリカが圧倒的ですが、2007年を機に一度大きく低下しています。2008年のリーマンショックの影響が確認できます。
日本は横ばいが続いています。
一方イギリスをはじめ他国は右肩上がりに増加していますので、日本との差も縮まっているような状況ですね。
2. 1人あたりの「国民の負債」は?
続いて各国の人口1人あたりの水準についても見ていきましょう。
図2が人口1人あたりの家計の負債です。
日本はやはり1990年代にアメリカを抜き高い水準でしたが、停滞が続くうちに、アメリカ、イギリス、カナダなどに抜かれています。
近年ではフランスや韓国を下回る水準のようです。
日本では家を建てる人が減っていますので、その影響も大きく関係していそうですね。(参考記事: 家を建てなくなった日本人)
3. 日本人の負債はすでに先進国下位
もう少し明確に、数値での比較をしてみましょう。
まずは日本経済の絶頂期だった1997年です。
図3が1997年のグラフです。日本は1人あたり2.2万$の負債です。
OECDの平均値の2倍以上の高水準でした。
図4が2019年のグラフです。
日本は2.8万$程度で、1997年より若干増えてはいますが、OECDの平均値(2.9万$)を下回る水準ですね。
アメリカやカナダ、イギリスなどには大きく差を付けられています。
前回、前々回で見てきたように、日本の家計は金融資産や純金融資産で見れば、現在もOECD平均値を上回り、今も比較的お金持ちの国です。
金融資産も負債も増加してはいますが、金融資産の増え方に対して、負債の増え方がかなり緩やかである事が考えられそうです。
4. お金は増えるけど、借金を増やさない日本の家計
続いて、家計の負債の成長率についても確認してみましょう。
図5が家計の負債について、1995年を基準(1.0)とした場合の成長率です。
日本はほぼ横ばいで、近年やや上昇傾向がみられますが、1.2倍程度の低成長です。
ドイツも低成長ですが、1.7倍程度ですね。
アメリカ、イギリス、フランス、イタリアはリーマンショックの影響なのか、途中で腰折れしていますが1995年に対して3.4~3.6倍程度に達しています。
カナダはリーマンショックの影響がみられず、右肩上がりで増加し続け5倍程度にまで成長しています。
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今回は、家計の負債についてフォーカスしてみました。
日本は1990年代に家計の金融資産も負債も高水準に達しています。その後、金融資産は緩やかながらも増加を続け、負債は横ばいを続けていたことになります。
お金は増えても、負債を増やしていないというのは大変特徴的な傾向ではないかと思います。
家計の負債は主に住宅ローンですので、適齢期の世帯数が減り家を建てる人が減っていることが大きな要因と考えられますね。
実は2人以上の勤労者世帯では、世帯主の収入が減る一方で、共働きが増えることで世帯収入は増えています。そして特に40歳未満の若い世代での持家率は増えているのですが、その世帯数そのものが減少している状況ですね。非婚化・晩婚化も進んでいます。
(参考記事: 収入増えても支出減らす家計、参考記事: 持家増で節約志向を強める家計)
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年4月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。