目的と手段を無意識に入れ替えてしまう「ありがちな過ち」

パーソナルトレーニングのトレーナーに相談して、自宅にダンベル(写真)とトレーニング用のベンチまで購入し、毎日のようにトレーニングを続けています。

一方で、毎日のように会食やらワイン会やらにも出かけています。トレーナーからは、お酒を飲むと筋トレの成果の30%が失われると警告されています。

「せっかくのトレーニングが3割引きでは勿体ない」と言われると、飲酒制限をして筋肉を鍛え上げてみたい欲求に駆られます。

しかし、トレーニングをしているのは、マッチョになるのが目的ではなく、基礎代謝を上げ、好きなものを食べたり飲んだりしても体型を維持できる体を手に入れるためです。

筋トレという手段が目的になってしまえば、そもそもの手段と目的が入れ替わってしまう。これは「ありがちな過ち」です。

お金の世界でも、実はこのような間違えを犯している人が多いのです。

お金とは人生の夢や目標を達成するための手段です。ところが、資産運用を続けているうちに、手段が目的に入れ替わって、お金自体が目標になってしまうケースがあります。

とにかく資産をできるだけ増やしたい。ゲームのように資産を増やすこと自体が目標になってしまう。このような考え方で投資を続けると、本来取る必要のない余計なリスクを取ることになります。資産運用のやり方としては正しいとは言えません。

まず、自分の人生に必要なお金を考え、それを達成するための最もリスクの小さな方法を選択する。これが理にかなった合理的な投資行動です。

誤ったお金との付き合い方によって、必要のないお金を手に入れるために過剰なリスクを取るだけではなく、大切な時間も消費してしまっています。

まずは自分にとって必要なお金がいくらかを考える方が圧倒的に大切です。

かく言う私も、そろそろリスクを取りまくる「人体実験」を見直すべき時期に来ているのかもしれません。自分の周りにいる人たちのお金のアドバイスをするだけではなく、自分自身のお金についてももう少し時間を取るべきだと思い始めました。

kazuma seki/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年9月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。