昨年まで5年間の累積インフレは200%超え
アルゼンチンの今年のインフレは100%近くになりそうだ。10月5日付のアルゼンチン代表紙のひとつ「クラリン」は9月のインフレが7%に手が届くまでになったことを報じている。また同月までの昨年から1年間のインフレは82.8%になるとしている。
昨年まで5年間のインフレ率は26%(2017)、34%(2018)、53%(2019)、42%(2020)、51%(2021)となっている。
自国通貨に全く信頼を寄せない国
今年インフレが急激な高騰を見せている主因はコロナ禍によるパンデミックの影響による景気の低迷と自国通貨ペソがドルの前に暴落しているということだ。
国民の間で自国通貨への信頼はなく、国民はドルを持ちたがる。また不況になればなるほどドルの需要が高まる傾向にあるからドルは高騰しペソは下落するということになる。しかも、アルゼンチンは国の規模に比べ輸出量が少ない。その為、外貨が市場で常に不足気味だ。それもドルが高騰する理由のひとつだ。これがすべてインフレを煽る。
倹約が苦手な国
しかも、アルゼンチンは体質的に倹約ができない国だ。だから政府の歳出が歳入を大きく上回るのが常となっている。それを修正するのに倹約して歳出を削減するのではなく新しく通貨を発行する傾向にある。だからインフレはますます上昇する。
余談であるが、これに似たようなことをやっているのが日本だ。財政赤字を国債で補填している。この国債を民間金融機関が引き受けることができなくなる時が必ず来る。その内、日本もアルゼンチンのようになるのが懸念される。
来年もインフレは100%以上
上述紙は2023年のインフレが112%になると指摘している。10月4日付の「アンビト」もJPモルガンが100%を超えると指摘しているのを報じている。
インフレが上昇を続ける理由のひとつに、販売業者は到来するインフレ率を憶測してそれでも損をしないように上積みして価格を設定する傾向にあるということ。だから、9月が7%のインフレ率となったことから、販売業者は10月はそれ以上に値上がりすると見込んで販売価格を設定するのでより高い価格になる。それが翌月のインフレをさらに煽ることになるというわけである。同様にこのインフレを利用して便乗値上げをする業者もいる。
その一方で、例えば販売の品数の多いスーパーマーケットでは開店する時間がいつも遅れる傾向にある。というのは、インフレ上昇率に合わせて新しい値札を付け直さねばならないからである。その作業に時間がかかってしまうというのだ。
倹約の精神はゼロ
そうかといって、国民も政府も倹約する姿勢にない。多くの国民は貯蓄をするのはなく、もっているお金を使う傾向にある。と同時にドルと交換する機会を狙っている。政府は必要な紙幣を刷る。
このような国民性であるから国全体が貧困化に向かっているのは当然だ。実際、現在の国民の4割は貧困者だとされている。子供は5割以上が貧困者だという。
世界でも有数の天然資源の豊富な国であるが、それを1世紀以上もの間生かしきれないでいるのがアルゼンチンだ。