海外不動産価格の下落は「対岸の火事」ではない

日本経済新聞によれば世界的な金利上昇の影響で、各国の不動産価格が下落に転じているそうです(図表を元記事で見る)。

スウェーデンの住宅価格はピーク時から約1割下げ、カナダの不動産は月間で3%という大幅な価格下落となっています。

イメージ VictorHua ng/iStock

海外と日本では、状況が随分異なります。日本国内では日銀による金融緩和政策がまだ続いており、金利上昇による影響はありません。東京都心の不動産価格は以前のような上昇は見られなくなりましたが、価格は高止まりしています。

しかし、海外不動産価格の下落を「対岸の火事」と、他人事のように捉え、油断することは禁物だと思います。

可能性は低いとはいえ、今後日銀が金融政策を変更するようなことがあれは、国内不動産マーケットには、かなり大きなマイナスのインパクトがあると予想できるからです。

日銀の金融政策変更を予想する人が少ないということは、万が一の場合にはそのサプライズによるインパクトは海外よりも大きくなるリスクがあります。

また、国内の低金利の継続を想定して、返済可能比率のギリギリまでお金を借りてマイホームを購入している人のリスクは、金利上昇だけではありません。収入減少によって、返済が出来なくなるリスクも抱えています。

住宅ローンの返済は数十年に渡ります。長い返済期間中に、そのような事態に陥るリスクは小さくはありません。返済額の上昇には125%ルールによって上限がありますが、25%の上昇であっても、ギリギリのローンを組んでいて、返済に行き詰まる債務者は意外に多いのです。

投資用の物件にも影響があります。ただし同じ借入でも、家賃収入による返済比率が大きく、家賃水準や入居率が安定していれば、金利上昇に対する耐性は相対的に高いと思います。

日本だけが金利上昇に取り残されている状況が永続するとは思えません。来年以降に日銀の金融政策に軌道修正が起こらないか、一抹の不安を感じています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。
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