電波解放は誰がする?

真野 浩

900MHzの電波割り当てで、周波数オークションが見送られ、次の900MHzも裁量割当の可能性が既に報道されている。過去10年の電波行政で死蔵している電波資源についても、あいかわらず何ら総括もなく、かつての電波政策ビジョンは何だったのだろう、果たして電波解放は誰がドライブできるのかということを考えてみた。


900MHzの割当は、オークションではなく従来通りの裁量行政で、ソフトバンクに割り当てられた。いままで、霞ヶ関の裁量行政に対して、解放を迫っていたソフトバンクが、今回は霞ヶ関と同調したことで、ソフトバンクに対する批判的な記事もある。しかし、民間企業として重要な経営資源の確保に向けて、その時々で最良の選択と判断をすることは、当然のことであり、これを批判するのは、大きな勘違いだろう。 ただし、”無私であり世のため人のためです” と公言して憚らない人が、ある日突然、前言を翻して私欲に走ったとしたら、その人に対する批判はするかもしれない。でも、これは、もともとその人に対する過度の期待から生じる不幸であり、永遠のスターやアイドルに完璧を求めて、リアルな側面が見えた瞬間に萎えるのと同じだろう。

もちろん、企業は、社会の機関の一部であり、”社会の公器”であるという考えも古くから有り、企業に求められる正義はある。しかし、少なくとも今回の電波割当については、他社の経営資源を搾取したりとかではなく、従前からの行政の手法に対応したわけで、これをもってしてソフトバンクを社会正義に反するなんていうのは、まったくナンセンスだろう。

NTTの局舎解放、ADSLでのドライカッパーの導入、電柱などの right of wayの解放、光の民間解放、携帯の価格の価格破壊等、ソフトバンクが行って来た様々な改革が、今日の、インターネットとIT社会の発展に寄与した事実は、誰もが認めるところなので、今回も電波解放まで期待した人が多いのかもしれない。

結局のところ、電波政策の転換は、行政サイドと通信・放送事業者というサプライヤーサイドからの改革を期待するのは、供給者の集団が限られて且つそれなりの規模の場合には、残念ながらその官民談合側から瓦解することは、期待できないだろう。

となると、この大きな利権集団(事業者と官僚)に対向しても、電波解放によるメリットを享受できると考える者の出現が望まれるのだが、それは誰だろう。消費者にとって、電波解放のメリットを与えることで、自らの事業成長を実現しうる産業で、既存の携帯/通信事業、放送事業に匹敵する規模のセクターとなると、なかなか思い浮かばない。

たとえば、ディジタルサイネージの分野は、一つ期待したいところだが、この分野は、放送、通信融合広告モデルという視点からなのか、総務省の好きなTVホワイトスペースで、エリアワンセグ展開なんていう狭義な夢に誘導されていて、このセクターからのイノベーションは期待しにくい。

となると、やはり最後はより上位層のビジネスで、インフラを自ら持たないけれど、そのアクセス経路、アクセス媒体の多様化と爆発的拡大がドライビングフォースになると期待してるビッグデーターやSNS系などのセクターが一つの候補でないだろうか。 

アメリカのTVホワイトスペースの解放では、グーグルが積極的な展開を見せているので、この理由や動きは大きなヒントになる。日本でも、ヤフーやMixi、楽天、DeNaとかが、電波解放を訴えはじめる日が来たら、変化が訪れるかもしれない。