グアイド暫定大統領の栄光は幕を閉じた
先月25日、ベネズエラのフアン・グアイド暫定大統領はひとり寂しく米国マイアミに向かった。彼が今後ベネズエラでマドゥロ大統領を政権の座から降ろす活動の主人公になることはないであろう。彼の栄光は3年余りで終焉を向かえた。
グアイド氏は2019年1月に国民議会の議長であったポジションを利用して暫定大統領に任命された。それはニコラス・マドゥロ氏が不正選挙で大統領に再選されたことに抗議する意味でもあった。グアイド暫定大統領への外国からの支持は即座に集まった。当時のトランプ米大統領の支持から始まって、世界60カ国余りがグアイド氏の暫定大統領就任を支持した。
2020年1月のグアイド氏のヨーロッパ訪問ではEU主要国であるドイツのメルケル首相(当時)、フランスのマクロン大統領、英国のジョンソン首相(当時)がそれぞれ個別に彼と会談を持って支援を約束した。
それから3年が経過したが、マドゥロ大統領を政権の座から引き下ろすことができないままになっている。その間に反対派勢力の中ではグアイド氏への指導力に疑問が持たれるようになっていた。しかも、グアイド氏が所属していた大衆意思党のリーダー、レオポルド・ロペス氏はスペイン大使館に長く保護されていたが、スペインに亡命した。その為、党内をひとつにまとめるリーダーが不在となった。また、ロペス氏に対抗するリーダーのひとりで、元大統領候補に2度なったことのあるエンリケ・カプリレス氏は公然とグアイド氏から離れて行った。
マドゥロ大統領を政権の座から降ろす前に、反対派勢力の方で分裂が生じたのである。
暫定政権の高額な予算が問題視されるようになった
しかも、昨年3月には暫定政権は安全と防衛のための予算として3500万ドルが組まれ、さらに追加で5000万ドルが承認されていたことが公然となった。これほどの高額な資金がなぜ必要なのか、またその使い道はどこなのかという疑問が持たれるようになっていた。しかし、この予算額は2017年までに米国の国際開発庁が反対派勢力に提供したおよそ6億ドルと比較するとその予算額は少ない金額である。
これらの高額資金は結局は、グアイド氏の旅費、アドバイザーを雇う費用、暫定政権を支える主要各国に派遣された大使への支援金などに支払われていたということだ。
しかし、高額な資金がこれまで提供されていたにもかかわらず、マドゥロ大統領は依然政権に就いたままであるというのが問題なのである。
コロンビアで左派政権が誕生したのもグアイド氏を不利にした
更に、グアイド氏の存在を否定する人物がコロンビアの大統領に就任した。元ゲリラ兵で左派のグスタボ・ペトロ氏だ。コロンビアは歴史的に右派が政権を長く担って来た。その影響で独裁者で社会主義者のマドゥロ大統領とは犬猿の中にあった。
ところが、ペトロ新大統領はベネズエラとの関係回復を図るようになった。その為にはマドゥロ大統領の反対派勢力の存在は邪魔になるのである。コロンビアがこれまで右派政権が続いていた時は、反対派勢力はコロンビアに常に拠り所を求めて来た。それがペトロ氏が政権に就いてからは期待できなくなったのである。
先月23日にコロンビアでベネズエラの民主化への政治的解決に向けての国際会議をペトロ氏は開催した。それにグアイド氏は参加しようとしてコロンビアに入国したが、コロンビア政府は彼はこの会議には招待されていないとして国外に退去を命じたのである。
その理由として、グアイド氏はこの国際会議に出席してマドゥロ大統領の政権を否定しようというプランを持っていたからである。この理由はコロンビア政府が指摘したことであって、一方のグアイド氏はベネズエラに自由選挙を復活させるための意思を表明する意向だったとしてマイアミに向かう飛行機の中でツイートで述べている。また、マイアミに向かう理由は、彼の家族がマドゥロ政権から脅迫されているからだとしている。(4月25日付「パナムポスト」から引用)。
グアイド氏は暫定大統領としての任を解かれていることから、今後の彼の身の安全は十分に保障されていないことになる。ベネズエラに戻れば逮捕されることは明白なので、帰国はしないであろう。
マイアミから反対派勢力に指示を出して彼の意向通りに動かすことは不可能である。それはスペインに亡命したレオポルト・ロペス氏にも同じようなことが言える。