「令和バブル」の昭和バブルとの大きな違い

株価の上昇や、不動産価格の値上がりが続き、資産運用をしている人たちには、大きな恩恵となっています。金銭感覚がかなりズレていることは、先日のブログにも書きました。

Galeanu Mihai/iStock

このようなマーケットの急激な変化を見て、昭和バブル以来の「令和バブル」ではないかと警戒感を示す人も増えています。

しかし、今回の資産価格の動きと1980年代の昭和バブルを比べると、そこには大きな違いがあると思っています。

まず1つ目の違いは金利水準です。1980年代後半の金利は住宅ローンでも6%以上あったと記憶しています。現在の金利水準からは、かなりかけ離れたレベルです。

昭和バブルのピークには、利回りが1%台の都心の不動産に借入金利6%で投資をしている人がいました。完全なる逆ザヤですが、将来の値上がりでカバーできると、投機的な資金が流れ込んでいました。

現在の金利は、賃貸利回りが下がったとはいえ、借り入れ金利より高い状況が続いており、逆ザヤにはなっていません。金利差からの収益が狙える状況です。

また不動産価格の上昇要因を見ても、昭和バブルとはかなり異なると思います。

今年に入ってから目立つのは、海外からの大量の資金流入です。

特に10億円を超えるような、東京都心の超高級物件は、アジアを中心とする外国人の独壇場となっています。日本人にとっては、いくら広いからと言っても都心のマンションの一室が10億円と聞けば、手が出ません。しかし、ニューヨークやロンドンなどと比較する人たちから見れば、「割安」に見えるようです。

そして、このような海外からの資金は、短期で利ざやを稼ぐような投機的な資金ではなく、長期的な資産性から購入している資金が主体のようです。購入された不動産は、当面の間は売り物件としてマーケットに出てくることがなく、供給過剰により価格が下落する可能性は低くなります。

昭和バブルが、銀行からの借り入れを使った国内投資家の短期資金が中心になっていたのとはずいぶん状況が異なります。

日本円は、米ドルに対してだけではなく、ユーロやポンド、そしてスイスフランなどに対しても下落しています。

外貨で見ると、日本の不動産は割安感が強く、今後円高になれば、外国人投資家から見れば、為替のキャピタルゲインも狙えることになります。

このように、昭和バブルとはかなり状況が異なっていることから、今の状況がしばらく続くのではないかと予想します。

ただし、上記の見方には、私自身の「ポジショントーク」によるバイアスがかかっている可能性があることはお含みおきください。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年6月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。