観光地のトイレは有料化した方がいいと思う

黒坂岳央です。

以前の記事で書いた通り、最近ワーケーションをした。長期間休みをとって子連れで観光地をあちこち巡ってきたが、数年前にはなかったある変化に気づいた。それは「トイレ」である。

外国人観光客を含む多くの人でごった返すエリアで、お店の入り口に「トイレのみの利用はお断りします」といった趣旨のお知らせの紙があちこちに貼ってあったのである。トイレのみの利用者に苦慮しているのがうかがえる。以前はこのような張り紙はなかった。インバウンド復活や国内旅行客増加に加え、観光地の店舗での人手不足も重なってのことだろう。

今後も観光客が多く押し寄せるトレンドが続くなら、観光地のトイレは有料化した方がいいと考える。もしくは新たに有料トイレを増やしていいと思う。その根拠を取り上げたい。

y-studio/iStock

トイレは無料で使えるもの?

ローソンは1997年に「トイレ開放宣言」をし、基本的には大手コンビニは積極的にトイレの利用を禁止してはいない。もはや実質的にコンビニのトイレは社会インフラに近い存在といっていいだろう。また、公園やサービスエリア、市役所や博物館などありとあらゆる場所で清潔なトイレが使える。

だが一部において有料のトイレが存在する。もっとも有名なのは東京秋葉原のトイレだろう。「いついってもほぼ必ず空いていて、清掃も行き届き広々快適なのでリピート利用している」という人もいるようだ。ネットの反響を見る限り、利用者からの評価は概ね非常に高いようである。だがその一方で失敗事例もある。京都市が2004年、2007年に設置した有料トイレは利用者が伸び悩み2012年にすべて撤退しているのだ。

欧州では公共のトイレが有料である国もあり(無料もあるが)、日本は「99%以上のトイレが無料かつどこでも手軽に利用できる」という国家である。日本人にとって「トイレは無料」という感覚があるのではないだろうか。

有料トイレへの潜在的ニーズ

これは国家の統計データなどがあるわけではないので、具体的な数字で表すことはできないが、個人的には年間を通じて利用者が大変多い観光地に関しては有料トイレの設置を増やすのはありではないかと思っている。正直、観光地のトイレは床が濡れていたり、利用者のマナーが悪く使うのに抵抗を感じることが少なくない。しかし、有料トイレなら清潔に使える可能性が高くなる。そちらを積極利用したいという人は少なくないだろう。

すでにお金を払った利用客にしかトイレを使わせない施策導入店舗も出ている。店舗立地や施設状況に応じて、スターバックスの一部店舗ではレシートに印字された暗証番号を入力しないとトイレのドアが開かないようになっているのだ。これなら、トイレだけ利用する人をなくし、混雑緩和や清潔さも保たれるのではないだろうか。

また、京都市の施策は一度失敗しているものの、今から20年ほど前の話でその時と比べれば外国人観光客も比較にならないほど増えており環境変化は大きい。インバウンド需要にわく今、設置すれば効果はあるかもしれない。

有料トイレを増やすことで、清掃やペーパー補充などのメンテンナンスコストをしっかりペイできるようになり、店舗側にもメリットが生まれる。利用者側も清潔で待たずに使えるメリットは大きい。

サービス業はただでさえ、労働集約型産業かつ人手不足の構造になっているのに、観光客だけはひたすら増え続けている難しい状況を迎えている。そろそろ、有料トイレを積極設置しても良いタイミングと考えるがどうだろうか。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。