【実体験】ワーケーションはデメリットが多いと思う

黒坂岳央です。

ワーケーションを肯定的に勧める記事や動画をよく見る。それに触発されたわけではないが色々なタイミングが重なり、意図せず自宅から700km離れた場所に長期滞在のワーケーションをしてきた。

結論からいえば、ワーケーションは世間でもてはやされているほどよいとは感じられず、むしろデメリットが多いと思えた。本稿は単なるイチ個人の体験談に過ぎないが、他の実践者にも再現する要素は少なくないはずである。尚、今回のワーケーションは、パソコン一台でホテル宿泊をしながらリモートワークをするという条件下で実施された。

TATSUSHI TAKADA/iStock

理由1. 機材不足

人や業態にもよるが、PCを使った仕事をする上で機材は結構色々と必要になってくる。よく「IT業ならPC一台で世界のどこでも仕事ができる」みたいな理想論があるが、実際にはPC一台では足りない事が多い。

作業効率を高めるために、複数の大容量外部ストレージや外付けディスプレイ、フルサイズキーボードなどを併用する人は少なくないだろう。これらは運搬の負担になるため、旅先への持参が難しい。結果、作業効率はかなり低下する。さらに作業に適したデスクや椅子もない。宿泊先のホテルの多くは、オフィスワークではなく楽しい旅先でのくつろぎを想定されているためだ。

自分の場合はその他にも、カメラ三脚、マイク、グリーンバック、照明、プロンプターを必要とするがこれらも一切持参できなかったため、関連する仕事は停滞してしまった。

理由2. 常に時間との戦い

社費で参加し、目的もスケジュールもカッチリ決められて出発する、会社員のワーケーション合宿みたいなものは別だが、自分のように長期滞在で宿泊先も行動も完全自由な状態で出発すると時間との戦いが待っている。「自由なのだからむしろゆったり過ごせるのでは?」と思っていたが、実際やってみるとまったくそうはいかなかった。

まずはホテルである。チェックインとチェックアウトは厳密に決められており、最もパフォーマンスが高い午前中の時間は朝食を終えて歯を磨いたらもう出ていかなくてはいけない時間になる。もちろん、同じホテルに滞在し続けるという選択肢も取れたし後半はそうしたが、せっかくならとワーケーションの醍醐味を理解するために宿泊先はあえて日替わりで変えてみた。結果、チェックアウトの時間を気にして仕事をするのはとても難しい。

観光を終えてホテルに宿泊する時も、夕食や風呂の時間、明日の用意などで非常に忙しく、常に時間を常に気にしながら怒涛のタスクを終えてあわててベッドに潜り込む感じであった。

後半は同じホテルに滞在したり、チェックアウト後もロビーのフリースペースで作業もしてみた。しかしそれをするとワークは捗ってもバケーションがおざなりになり本末転倒である。チェックアウト後も観光先のアクセスや営業時間などのリサーチ時間の捻出が実質的タイムリミットとなってしまい、結果として仕事も観光も中途半端になるのだ。

理由3. セキュリティ対応

最後の理由はセキュリティが脆弱になることである。

物質的なセキュリティ面で言えば、オープンスペースに貴重品を置いたままにはできないので、常に荷物を気にすることになる。日本ではそうそう盗難のリスクはない。しかし、昨今外国人観光客も増えてどこも混雑しており、公共の場にはいろんな人がいることを考えると気軽に荷物をおいてトイレにもいけないのだ。

デジタル的なセキュリティ面は、インターネット接続である。ホテルのロビーのWifiは暗号化されているが、それでも公共の通信回線で銀行や証券などのサイトへのログインはどうしてもはばかられる。結果、重要なサイトへのアクセスの時だけモバイル通信につなげるという手間が発生する。このあたりは別途VPNを契約するか、モバイルルーターを準備すれば解決するが、それでも荷物や手間が増える。ワーケーションは自宅でネット接続をするより、圧倒的にセキュリティに対するプレッシャーがかかる。

こうしたセキュリティ対応に迫られることで仕事や観光以外のマインドシェアが専有されると感じる。

結論としてワーケーションは、持参する荷物も肥大化する上に、仕事も観光も中途半端になりがちになる。観光を優先すると仕事が中途半端になるのが気になるし、仕事を優先すると観光にコミットできなかったことへの後悔が残るので充足感とともに終える難易度はかなり高い。やはり仕事をする時は仕事に集中し、観光をする時は仕事は一切せず観光に集中した方がよいと感じる。

自分は子連れだったのでこれに子供の世話が加わり、難易度は更に高かった。忙しくしているのに、タスクが進まないもどかしさが強く、ワークとバケーションは混ぜるよりわけた方が断然合理的だと思えた。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。