日本はライドシェア解禁を急げ

野口 修司

筆者は10年近くにわたり、待ち続けてきた。それは「ライドシェア=RS」「配車サービス」「乗合サービス」「相乗りサービス」という概念・技術・経済活動だ。公益性が非常に高いため、日本でも導入されるべきだと、強く信じている。

これは例えばよく知られている食品のデリバリーとは異なり、真のウーバー体験を提供するものだ。他にも「リフト」や、アメリカ系が好みでない方には「デイデイ」や「グラブ」といった他の国の選択肢もある。

もちろん、日本独自の技術があるなら、最も適した選択となるだろう。現在は似たような技術も存在するが、まだ十分な水準に達していないようだ。

規制緩和が実現、門戸開放があれば、日本のものも含めて各社が日本国内で活動を始める。どんな業種でもそうだが、最終的には安くて良質が生き残る。利用者は王様。利用者が決める。

つい最近、菅元総理が真剣に導入を検討していることを示した。まだ確定的ではないが、法改正を経て日本社会に浸透することで、多くの課題が解決されると信じる。

このサービスは世界60数カ国で導入され、多くのケースで成功を収め、いまでも世界中に広がっている。ほぼ問題がない状況の中で、唯一の障害がタクシー業界の反発だ。しかし、他の国々では紆余曲折はあったが、基本的には順調に受け入れられ、タクシー業界と共栄共存している。

自動運転普及は別の可能性だが、タクシーが無くなることは絶対にあり得ない。もしRS(ライドシェア)が嫌いなら、いままで通り、高い料金を払って2種免所持者が運転するタクシーを使えば良いのだ。

ほぼなんでもそうだが、日本は選択肢が少ない。利用者が選べるものが多くないのだ。 競争原理が機能すると、公益性があり、安くて良いものが残ることを忘れてはいけない。

日本ではまだ知名度が低く、タクシー業界と政治の関与が導入を妨げたとの意見もあり、日本の人々が利用できない現状は変わっていない。

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筆者は40年以上にわたり、米国を中心に世界中を取材してきた。通常は自分でレンタカーを運転して移動する。大型2種免を所持し、ワーゲンのバスでアフリカ中を取材するなど、様々な経験を積んだ。だが最近は、国や取材内容によっては、タクシーはもちろんのこと、このRSを利用することも多かった。

過去10年以上、数十カ国で何百回も利用した。 全州を訪問した米国はもちろんのこと、欧州各国やロシア、中東、東南アジア、アフリカなどなど。タクシーより2〜5割くらい安い料金で素晴らしいサービスを体験した。 多くの日本人はまだこのサービスを実際に利用したことが少ないので、詳細について知識が限られているかもしれない。

ここでは筆者の体験を共有したい。これにより、このシステムの本質をより深く理解いただけるかと思う。

10年ほど前に人生で最初に利用した時のショックをいまだに覚えてる。 場所はパリ。いつものタクシーより料金は4割安。最初から走るルートと料金がスマホに表示されているため、分かっていた。雲助タクシー(※)。東京でもあった。東南アジア、中東、アフリカなど珍しくない。これまで数十回、嫌な体験をした雲助運転手が活躍する機会が、RS利用下では全くない。

※ 雲助・・・相手を見て法外な料金を要求するタクシーの運転手のこと。

タイヤの回転数=走行距離を元にして、走れば走るほど客からお金を取れる料金体系とは違う。土地勘がない初めての客相手に通常より高い料金を取るための遠回りは、不可能。だからその分、安心できる。

その時のフランス人運転手は英語ができなかったが、全く問題無し。こちらも忙しく、乗りながら、後部座席でPCを利用していたこともあり、最初から最後までお互いに沈黙だった。 タクシーで現金支払いの場合、釣銭が生じることも多い。帰国したらまず使うことがない外貨の小銭がたくさん溜まり、面倒な気持ちになることもなかった。

実際に東京であった事例だ。訪問した外国人観光客の親戚が事故に遭った。一刻も早く病院に駆けつけたかった。だが拾ったタクシーの運転手とは日本語の問題で意思疎通が全くできず、事態が悪化した。RSの場合、行先を事前に打ち込めば、それで完了する。病院、ホテル、空港などは名前を入れるだけ、住所までは不要なことが多い。

通常、日本でタクシーを拾った時の展開。乗り込んで、行先をいう。運転手はどこそこ経由でいいですか?と聞くことも多い。やり取りのあと、行先をカーナビに入れて走り出す。RSはこのやり取りアが全て不要だ。日本語が全くできなくとも問題なし。渋滞度合まで考慮に入れた最短時間で、目的地に到着する。

RS(ライドシェア)の導入による日本の交通システムへの貢献は計り知れない。7年くらい前か、琵琶湖近くの県で、試験導入をしたことを覚えている。福岡でやったのとは違う実験だ。その時、非常に高い評価を得て「究極の公共交通」と言われが、どうやら潰されたようだ。

地方は車無しで生活できないといえる。バスは多くない。タクシーは少ないし料金が高い。新たに、線路を引いて電車を走らせることなどは論外だ。

この相互助け合いのような側面をもつRSが、1つの答えになるといえる。高齢者の免許返納問題も少しは解決できる可能性がある。高齢者の買い物も、比較的安価で済ませられる。

運転手不足で、ますます深夜の雨の時など、駅前のタクシー待ちの行列をみるたびに、なぜRSを入れないのかと思う。

ライドシェアの特筆すべき点をもう1つ。運転手側の利点だ。普通免許を持っていて自分の車を持っていれば誰でも参加できる。他の自分の仕事を持っているとする。暇な時間ができて、少々お金を稼ぎたいと思った特に、好きな時間に好きな量だけ仕事ができる。

働きたい時間が来たら、アプリをONにする。自分の近くにいる客が、乗車希望を知らせて来る。行先と料金を知り、過去の評価をみて、お互いにOKであれば、あとはその客が待っている場所に画面通りに走ればよい。客を乗せて行先まで行って降ろせば、それで終わり。後日、収入が入ることを確認できる。その日はそれで終わるもよし。もう少し時間があり、稼ぎたいと思えば、同じように、アプリをONにして、客を待てばよい。その繰り返しで、好きな時間だけ、働ける。究極のフレックスタイム労働だ。

最後に日本への導入への障害だ。まずは日本では白タクが禁じられている。導入するなら、法改正が必要になる。では、職業運転手が運転が巧く、事故も起こさないか、サービスも良いかというとそうでもないはず。筆者も大型2種免を持っているが、普通の人と比べて特に優れているとは思わない。どんな世界でもそうだが、競争原理を導入して、安くよいものが残るような社会にしたらどうだろうか。

ある程度有名な話だが、日本の大手タクシー会社の社長の息子か孫か、タクシー王子と呼ばれる人がいる。RSが日本に入れば、自分の会社やタクシー業界が危機に瀕すると思い、政治と組んで、日本への参入を阻止しているという噂がある。事実ならとんでもない話だ。タクシー運転手の仕事はもうすぐ自動運転普及で少なくなる。業界と政治が癒着、彼らが既得権益を守り、公益性が犠牲になっているとするなら、許せない。

さらに、攘夷思想もあると聞いた。一番有名なウーバーは、米国の会社。車とか技術に関して米国にやられたくないという考えが日本にはあるらしい。それもタクシー業界による導入反対の声を後押したらしい。まずは日本企業、米国が嫌なら、中国でもよいだろう。とにかく安く良いものが勝つ。基本はRSを使えば公益性があることを実感できる。保証できる。

米国をよく知らない人が、RSでは犯罪がこれこれの数があるという。米国はタクシーでも基本は同じ。タクシー運転手でも悪い奴は日本と比べものにならないくらいの数がいる。世界一ともいわれる日本人の民度の高さ、安心安全な日本なら、米国で起きているような傷害事件は比較にならないくらいゼロに近いだろう。

だが万が一の事故への対応や、保険会社との話合いは難しく複雑だ。これは米国やRS企業が活躍している国から、ノウハウを学ぶべきだろう。

昔ロンドンで、伝統的なタクシー運転手から、不平不満を聞いた。自分の職業がなくなるという危機意識からきていた。しばらくしたら、ロンドンではRSがなくなった。しかし、その後、再度復活、結局、タクシー業界と共存共栄時代が来ている。

米国も似たようなものだ。NYやロスなど空港に専用乗り場があるなど、完全に定着している。タクシー乗り場も健全だ。世界的には間違いなく増えている。最初から想像と決めつけで禁じるのではなく、導入して試すべきと思う。利用者はどちらかを選択できる。嫌ならそのRS企業が、日本から撤退する。どんな世界でも競争は厳しい。安くよいもの、これが残る。

先ほどの河野デジタル大臣のコメント。タクシーでカバーできない部分ではRSを利用することも考える、的な発言だった。だめだ。どこで一線を引くのか?タクシーではうまくいかないというのはどこで判断するのか?タクシー待ち行列がいまの1時間が2時間になればよいのか?日本語ができなくて困る外国人観光客がいまの数倍になればよいのか?既にタクシー運転手不足で、観光地などが悲鳴を上げているだけでなく、タクシー業界では需要に対応できないという声も聞く。観光以外にも、地方のニーズにRSは対応できるが、タクシーではできない可能性が高い。いつまで待てば良いのか?

RSが日本に導入されれば、タクシー業界は影響を受けるのは間違いない。だが世界をみよ。共存共栄している。自動運転で仕事がなくなる可能性はあるが、RSが原因でタクシーの仕事がなくなることはまずあり得ない。利用者が選べる部分が素晴らしいのだ。そして安くよいものが勢力を増す。

以下のニューズウィーク誌の記事は、ホリエモンがこの問題をよく理解していることがわかる。

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