マイナンバー問題を解決するために:問われる政府の情報発信力

情報通信政策フォーラム(ICPF)では、8月24日にZOOM連続セミナー「マイナンバー問題を解決するために」第1回を開催した。講師に招いた大林 尚日本経済新聞編集委員の講演の後、多くの議論が行われた。

議論が集中したのは、政府の情報発信力不足である。

  • マイナンバーを安心して利用してもらうためには、事実に基づくわかりやすい説明が必要だが、政府には国民に理解を求めるという姿勢が不足しているのではないか。
  • 誤解が広まっていると思ったら、できるだけ早く情報提供するのは政府の「義務」である。そのことを政府や省庁は全く理解していない。きちんと情報発信する姿勢が求められるのではないか。
  • 海外の政府サイトには、外国人にもわかりやすい説明が載っている。正確、かつ誰にでもわかるという工夫が日本政府には不足している。DXが進めば進むほど、わかりやすい情報発信力が必要になる。
  • 日本の各府省には広報の概念はなく、個々の部署が情報発信している状態である。
  • ホワイトハウスの説明はプレーンイングリッシュで書かれている。それと同じような方針を打ち出すべきだ。

国民視点での使いやすさ、利便性に関する指摘もあった。

  • 銀行ATMならカードの差し込み方法は共通だが、マイナ保険証の読み取り機は、マイナンバーカードを縦にかざしたり、横にかざしたり、差し込んだりまちまち。これでは混乱する。
  • 読み取り機は各医療機関がばらばらに各社から購入しているので、今のような状況になっている。厚生労働省が統一仕様を決める必要がある。
  • マイナ保険証の利便を実現するには、まずは電子処方箋から手を付けるべきではないか。マイナ保険証で本人確認すれば、紙の処方箋を持参する必要がなくなるということで、マイナ保険証の利便が国民に伝わっていくからだ。

一言でいえば、国民目線で施策を立て直すこと。それができなければ、いつまでも問題は解決しそうにない。そのためにも、政府の意思決定の在り方に関する次の意見は参考になるだろう。

  • 詳しく理解できていない総理大臣・大臣等と次官・局長等で対策を決めていくことが間違いである。一番わかっている人が、課長補佐でも構わないので、官邸と議論して決めるべきだ。他国ではすでにそのようになっている。

連続セミナー第2回は「エストニアに学ぶ」。9月28日木曜日午後7時から、牟田 学さん(日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会理事)に講演をお願いする。ぜひご参加ください。