1. 現実個別消費の国際比較
前回は、日本の統計データ(内閣府 国民経済計算)より、家計の現実的、個別的な消費である現実個別消費(AIC:Actual Individual Consumption)についてご紹介しました。
現実個別消費は、家計(NPISH含む)の最終消費支出に、政府の個別消費支出を加えたものです。
家計最終消費支出は横ばいが続いていますが、主に保健への支出増加により政府個別消費支出は増えていますので、現実個別消費も緩やかに増加している状況のようです。
今回は、このような現実個別消費の水準が国際的に見て多いのかどうか、人口1人あたりの水準で比較してみたいと思います。
現実個別消費 = 家計最終消費支出 + 対家計民間非営利団体最終消費支出 + 政府個別消費支出
まずは、名目での為替レート換算値から推移を見てみましょう。
図1が人口1人あたりの現実個別消費の推移です。
日本(青)は1990年代に高い水準に達し、その後はアップダウンしながら緩やかに増加傾向です。
1人あたりGDPや平均給与と似たような推移ですが、これらと異なるのは日本は近年までOECDの平均値を上回っていてフランスと同程度で推移している事です。
主要先進国ではやや低い方ではありますが、それなりの水準は維持しているように見受けられます。
図2が2021年の水準比較となります。
アメリカが52,221ドルでルクセンブルク、スイスに次ぐ非常に高い水準となっています。主要先進国ではカナダ、イギリスが上位ですね。
日本は26,599ドルで、OECD38か国中20位、G7で6位となります。OECDの平均値をやや下回るレベルです。
上位にはノルウェー、アイスランドなど北欧諸国が並ぶのも特徴的ですね。
2. 購買力平価による国際比較
続いて、購買力平価換算による国際比較をしてみましょう。
購買力平価によって換算すると、アメリカの物価水準に合わせた上での数量的な比較をすることになります。
購買力平価は、通貨コンバータであり、空間的価格デフレータとも呼ばれます。
経済厚生の比較としては、現実個別消費の購買力平価換算が推奨されているようです。
OECDで公開されている時系列の購買力平価は、GDP、民間消費、現実個別消費の3種類のみです。
現実個別消費の購買力平価は、まさにこの指標をドル換算するためだけに用意されたものと言えます。
図3が1人あたり現実個別消費の購買力平価換算の推移です。
日本(青)は主要先進国の中でもやや低い水準が続いていますが、2014年以降は横ばい傾向に転じ、2021年ではイタリア以外の主要先進国と差が開いています。
購買力平価でドル換算すると、どのような経済指標でも近年ではこのような乖離が見受けられますね。
韓国との差も縮まっているようです。
図4は現実個別消費(1人あたり)の2021年の国際比較です。
国際比較としては最も重要なグラフと言えそうです。
アメリカが52,221ドルで圧倒的な水準で、主要先進国では次いでドイツが続きます。
日本は28,262ドルでOECD38か国中20位、G7最下位となります。OECDの平均値もやや下回る水準です。
3. 現実個別消費の特徴
今回は、現実個別消費について国際比較をしてみました。
やはりアメリカやスイス、ルクセンブルク、北欧諸国が高い水準となります。
日本は1人あたりGDPよりもやや水準が高めになるようで、2021年ではOECDの平均値をやや下回る程度となるようです。
政府個別消費が加わる事によって、家計が現実に消費する金額や数量が増えている事が考えられそうです。現実個別消費の内訳については、今後ご紹介したいと思います。
ただし、増えているのは保健ばかりである事にも注意が必要ですね。
家計最終消費支出でも、生活に必須の消費は増えていますが、娯楽・レジャーや外食・宿泊などの消費は減っているという傾向もあります。
皆さんはどのように考えますか。
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年3月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。