大谷選手の報道で感じる「一次情報」なき不毛な議論

大リーグドジャーズの大谷選手が巻き込まれている違法スポーツ賭博振込問題は、少なくとも日本国内では大騒ぎになっているようです。

ロサンゼルスにあるドジャースタジアム Chaz T deVerdier/iStock

沖縄で車での移動中に後部座席のテレビでもワイドショーが放映されていました。そこでは長い時間を割いてアメリカの弁護士資格を持った人などをゲストにこの問題を取り上げていました。

そのやり取りを聞いていて、大きな違和感を感じました。

一番の理由は、事実関係がわからない中で、「評論家」が仮定を勝手に設定しながら番組を進行させているからです。

アメリカの法律事情にどれだけ詳しい弁護士が出てきても、資金の送金を誰がどのように行なったかについての一次情報がなければ、すべての話は推測を前提にしたものに過ぎません。

また、送金した銀行がどの銀行で、どのような本人確認をする仕組みになっているのかがわからなければ、口座名義人以外の第3者が送金できるのかどうかはわかりません。

このような核心に触れる情報がまったく無いのに、あれこれ詮索をしても、意味のある結論がでないことは明らかです。

もちろんテレビのワイドショーの報道の目的は、正しい結論を導き出すことで無く視聴率を稼ぐことです。意味のないやり取りを続けていても、それが視聴者にとって面白く興味を惹かれる内容であるならそれで良いのです。

しかし、これが仕事や投資になると、そうはいきません。正しいインプットが得られなければ、アウトプットには意味がありません。

当たり前と思うかもしれませんが、このような不毛な議論をして時間を浪費することは意外に多くあります。

正しい判断をするために必要なことは、出来るだけ情報を発信している当人に近いところにアプローチして、バイアスやノイズの無い一次情報を得るようにすることです。一次情報にアクセスできなければ、複数の情報源からの内容を比較検討し、信ぴょう性の高い内容を推察する。

今回の報道を見ていて、ワイドショーのコメンテーターに意味のある判断をするためにはできる限り一次情報へのアクセスをすべきという当たり前のことを、再確認させてもらいました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年3月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。