松本龍辞任の問題発言まとめとメディアの報じ方の歴史修正「最後の発言はオフレコです書いたらその社は終わり」等

歴史修正が為されようとしている

松本龍復興担当大臣辞任の問題発言の炎上と歴史修正

平成23年=2011年7月、民主党政権の松本龍復興担当大臣が辞任した理由には東北(岩手・宮城)視察時の種々の問題発言がありますが、松本龍の問題発言が令和6年5月のGWにSNSで話題となり、報道の展開について論争が見られるようになりました。

この背景には5月頭に国境なき記者団による報道の自由度ランキングが報じられ、それとの関係で書いたらその社は終わりという発言にまつわる報道姿勢が論じられているのですが、その中で歴史修正が為されようとしているので改めて情報を整理します。

「松本龍の問題発言」は複数あるので要注意です

  1. 岩手県の達増知事との会談で
    「九州の人間だから、東北の何市がどこの県とか分からない(笑)」
    「知恵を出したところは助けるけど、知恵を出さないやつは助けない。そのくらいの気持ちを持て」
  2. 宮城県の村井知事との会談で
    「政府に甘えるところは甘えていい。こっちも突き放すところは突き放す。そのくらいの覚悟でやっていこう」
    被災した漁港を集約するという県独自の計画に対して「県でコンセンサスをとれよ。そうしないと、我々は何もしないぞ」
  3. 宮城県知事室での応接に関して村井知事に対して「今、後から自分入って来たけど、お客さんが来るときは自分が入ってからお客さんを呼べ。いいか。長幼の序がわかってる自衛隊ならそんなことやるぞ。わかった?」*1
  4. 上記発言の後に「最後の発言はオフレコです書いたらその社は終わり」

これらの内「書いたらその社は終わり」についての報道姿勢は、各所が最初から一貫したものではありませんでした。ところが、他の問題発言と混同して「後追い報道ではなかった」などといった主張が出始めています。

東北放送TBC「最後の発言はオフレコ・書いたらその社は終わり」放送

――松本龍復興担当大臣が就任後初めて今日宮城県庁を訪れましたが、村井知事が出迎えなかったことに腹を立て、知事を叱責しました。

宮城県庁を訪れた松本龍復興担当大臣。村井知事が出迎えなかったことで顔色が変わります。

松本復興相:「(村井知事が)先にいるのが筋だよな」

――数分後、笑顔で現れた村井知事が握手を求めようとしますが、これを拒否。応接室に緊張が走ります。そして要望書を受け取ると、松本大臣が語気を強めて自らの考えを伝えます。

松本復興相 (水産特区は)県でコンセンサスを得ろよ。そうしないと我々は何もしないぞ。ちゃんとやれ

松本復興相 今、後から自分入って来たけど、お客さんが来るときは自分が入ってからお客さんを呼べ。いいか。長幼の序がわかってる自衛隊ならそんなことやるぞ。わかった?
村井知事 はい
松本復興相 はい、しっかりやれよ。
松本復興相 今の最後の言葉はオフレコです。みなさん、いいですか。(取材に来たマスコミに対して)書いたらもう、その社は終わりだから

――松本大臣のこの言動は波紋を呼びそうです

3日同日、東北放送=TBCが宮城県知事室での松本復興大臣の問題発言を「最後の発言はオフレコです、書いたらその社は終わり」も含めて放送していました。

「この放送により、他の報道各社が問題発言を報じるようになった」と言われており、後述しますがその通りだと言えます。

3日は日曜日であるため夕刊も無く、新聞各社が「松本大臣の問題発言」を報じるのは翌4日月曜日の朝刊や夕刊からになりますが、「書いたらその社は終わり」を全国紙が書くのは5日になってからでした。

なお、松本復興大臣と村井知事は「旧知の間柄」だという指摘が産経新聞や朝日新聞の天声人語などで見られまが、一連の発言はそれにより正当化できるものではないでしょう。また、この前提に立つと「その社は終わり」発言の後に村井知事が笑っているものの、親しい9歳差の者が高圧的な姿勢を見せた後ではそうするしか無かったと思われます。*2*3

言論弾圧の脅迫文言のメディアの報じ方:4日はスルー、5日に報道

各社の報道姿勢は、4日に「他の問題発言」は報じたが、情勢を見て5日には「書いたらその社は終わり」についても書くようになった、と概ねまとめることができます。

現に、4日のANN(テレビ朝日がキー局)の上掲動画では「書いたらその社は終わり」の部分が華麗にスルーされているのが分かります。言論弾圧の脅迫文言として、報道機関にとっては死活問題となる発言のはずですが…

それでも、朝日新聞は5日には以下のように触れて論じていました。

朝日新聞 社説 復興相発言―こんな人では心配だ 2011年7月5日(火)付

松本龍復興担当相が就任後初めて訪れた東日本大震災の被災地で、いきなり脱線した。政府の復旧・復興への取り組みを約束すると思いきや、岩手、宮城両県知事に対し放言を重ねた。

いわく「知恵を出したところは助けるが、知恵を出さないやつは助けない」。

いわく「県でコンセンサスをとれよ。そうしないと、我々は何もしないぞ」。

この上から目線は何なのだ。政府と自治体は「上下・主従」でなく「対等・協力」の関係であることを知らないのか。

もちろん復旧・復興の主役は被災者であり、その自治体だ。何でも政府に頼るのではなく、みずから青写真を描く責任がある。だが、財源も権限も情報も握る政府がそれを支えてこそ、作業は円滑に進むのだ。

松本氏は「九州の人間だから東北の何市がどこの県とかわからない」とも言った。3カ月余り、防災担当相として日夜、東北の地図を見つめてきたなら、こんな軽口はたたけまい。

極め付きが、宮城県の村井嘉浩知事への叱責(しっせき)だ。

後から県庁の応接室に入ってきた知事に「お客さんが来る時は、自分が入ってから呼べ」と言ったばかりか、取材する報道陣にも「今の言葉はオフレコです。書いたら、その社は終わりだ」と続けた。

相手が旧知の知事だという気安さはあったろう。復興相専任になったばかりの気負いもあったのかもしれない。

だが、こんな発言はあり得ない。そもそも松本氏は「客」ではない。被災者とともに汗をかく役割を担っている。それに松本氏に、知事の後ろにいる被災者の姿が見えていれば、あんな言い方はできっこない。

こんな人物が復旧・復興の司令塔として適任なのか。とても心配だ。野党は一斉に批判しており、またぞろ菅直人首相の任命責任も問われそうだ。

紙面でも同様に発言をまとめていました。

次に、毎日新聞も4日の時点では「書いたらその社は終わり」には触れていませんでした。「オフレコです」までは書いていたのに。

ところが、5日になると「書いたらその社は終わり」まで報じるようになりました。

日経新聞も5日には松本大臣の問題発言をまとめ「書いたらその社は終わり」に触れています。

共同通信の配信記事にも記述があったようです。

なお、田原総一朗氏が4日と5日の報道の仕方に差異があると認識しているのが見つかりますが、「書いたらその社は終わり」に関する実際の紙面の態度と一致しています。

まとめ:後追い報道も報道の自由への恫喝の指摘が無い

3日の知事室には報道各社の記者が詰めかけていたはずで、さらに同日中に地元メディアの東北放送TBCが放送していたにもかかわらず、「書いたらその社は終わりだから」という恫喝発言が全国的に報じられたのは5日からです。

これを「TBCの後追い報道」と呼んで何か都合が悪いのでしょうか?

また、紙面に掲載したとしても、本件を「報道の自由」との関係で論じ、非難するものが一切無かったのは衝撃的です。 

ネット上にある他の報道機関の記事を読んでも、各所が一番ヤバい発言である「書いたらその社は終わりだから」を隠蔽して別の問題発言についてアリバイ的に報じてるのではないか?というものが散見されます。

この発言は当時、SNS上で大拡散され問題視されていました。*4

当時、民主党政権に対して奇妙なほどに甘い報道機関の論調がありましたが、ここまで極まっていたのか。「日本には報道の自由が無い!」と報道界隈が論じる資格は無いのではないかと思わざるを得ません。


編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年5月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。