目的を考えて働けば、1時間の会議は数分で済む(滝川 徹)

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仕事を早く終わらせるためにとにかく早く着手する。このことを心がけている人は多いだろう。しかし実は、着手前に仕事の目的をあらためて考えると、作業量を大胆に減らすことができる。

そう語るのは現役会社員・時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング) 』より、仕事を最速で終わらせる思考法について、再構成してお届けします。

常に仕事の目的を考える

多くの人が、目の前に仕事があるととにかく早く手をつけようとする。しかし能率的に働きたいなら、仕事にとりかかる前に「どうすればこの仕事を最速で終わらせることができるか」を考える習慣をもつことが大切だ。そのために必要なのは常に「仕事の目的」を考えることだ。

たとえば部署内で勉強会を開催することになったとする。ではそもそも、勉強会を開催する目的は何か。その会で取り上げる内容を参加者にきちんと理解してもらうことだ。その目的さえ達成できれば、本来どんな方法の勉強会であっても形式は自由と言える。

にもかかわらず勉強会と聞くと、パワーポイントなどのツールを使った資料作りと脳内変換してしまうビジネスパーソンがあまりにも多いのだ。勉強会とは「そういうものだ」と思いこんでしまっているのだろう。そうして大量の時間を見栄えの良いスライド作りに費やしてしまう。

目的を見失ってはいけない。ゴールは勉強会が終わった時点で、参加者が正しい情報をきちんと理解していることだ。けっしてきれいな資料を持って会議室を出ていくことではない。

かけるべき労力は「どうやったらこの内容を参加者全員に理解してもらえるか」だ。そしてどうすればそれを最速で達成できるかをあわせて考える。勉強会の構成を考えて、資料をきれいに仕上げて、では時間がいくらあっても足りない。

たとえば私ならワードなどでポイントを箇条書きにした資料を作る。資料の見た目にこだわる代わりに勉強会の構成(話す内容やそれらを伝える順番)を工夫する。そのほうが見栄えの良い資料を配布するより、よっぽど参加者に内容が伝わったりする。こうした例はほかにもたくさんある。

効率的・効果的なコミュニケーション

電話で5分ですむ話を20分かけてメールしたり、その場で確認すれば完結するのに帰社後に確認してメールすることにしたり。

「○月○日に会議を開きます」といった単なる情報の伝達(事務連絡)などであればメールなどを使うべきだ。

だがややこしい話にはテキストを使ったコミュニケーションは向いていない。文面での説明は難しく、何回もやりとりすることになるのがオチだ。そうした話は電話で伝えたほうが早く・正確にすむ。

私はただいたずらに相手の時間を奪えと言ってるわけじゃない。「目的に応じて手段を考えよう」と提案しているのだ。

たしかにメディアによく登場する人たちは電話連絡を推奨しない人も多い。堀江貴文氏は「電話してくる人とは仕事するな」と言っていた。でも君も同僚も普通の会社員で、堀江氏のように多方面から連絡が入ってくるわけではないだろう。

ならば安心して電話をかけて効率化を図ろう。クライアントなど配慮したい相手なら「〇〇の件で電話でお話したいのですが、いつ頃が都合がいいですか?」と事前に連絡事項を入れておけばいいだろう。

1時間の会議を数分で終わらせる方法

そうそう、会議もだ!

当たり前のように会議当日に資料を配布して説明することからはじめていないだろうか。会議の目的は? 多くは合意形成(決議事項について合意すること)であったり、情報共有ではなかろうか。それならば次のような手段を選択することもできる。

  • 情報共有が目的:事前に会議参加者に資料をメールし、会議までに概要を把握しておいてもらう。当日は資料の補足や認識のすり合わせとする。
  • 合意形成が目的:合意形成したい内容を関係者にメールし「ご意見あれば○月○日までに全員返信で返信してください。期日までにご意見がなければ、このまま進めさせていただきます。もしご意見に基づく打ち合わせが必要となれば改めてセッティングしますので、ご希望の場合はご連絡ください」と書き添えておく。

これならばこれまで1時間かかっていた会議を数分で終わらせることができるし、そもそも会議自体を実施せずにすむ場合もある。

私はここ数年これを実践しているが、当然ながら今まで問題が起きたことは一度もない。こういった業務効率化は誰にとっても有益なはずだ。だが日本企業の古い体質に染まってしまっていると、こんなに簡単で当たり前に価値あることすらも取り組もうとしない。それまでの価値観をヨシとする人たちからの批判や、他者からの同調圧力を恐れる気持ちがあるからだろう。

しかし安全と効率はトレードオフ(=2つの要素は両立しない)だ。安全をとっている限り、生産性高く働くことはできない。勇気をもって仕事のやり方を変えていこう。いずれ君のやり方が会社の常識に変わる日がくるはずだ。

滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。 

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年5月14日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。