久々に政治が面白くなってきました。衆議院補選で立憲が3つ取り、その勢いで注目の静岡知事選でも立憲など野党連合と自民の戦いは野党連合が勝ち抜きました。そして立憲から大物が出ると噂されていた東京都知事選に蓮舫議員が出馬することを表明しました。ただ、今回の戦いは自民対立憲ではなく、小池百合子対蓮舫ですので構図が違う点は間引いて考える必要があるでしょう。
個人的には小池氏が有利だとは思っています。理由は東京の人はコンサバなのです。前回、都知事選の話題を振った時に年寄りが多い東京都と申し上げました。そして選挙でまじめに投票するのもまた高齢者なのです。
そのような方々に蓮舫氏のまぶしいばかりの白いスーツでキンキンと刺々しく、舌鋒鋭くまくしたてられたら、つばさの党も逃げるし、おじいちゃんにおばあちゃんは「早口でよくわかんないねぇ」と言われるでしょう。東京都の選挙には化粧は厚いけど、橙色の地味な感じで人の話をよく聞く小池さんがいいわよねぇ、なんです。
石原さんのように文鎮のようなタイプなら別ですが、作家とか国際政治学者ぐらいの経歴では東京都のドンとしては不十分なのです。その点小池氏はやはりプロの政治家であると同時に実務経験がある点は蓮舫氏では比較対象にならないと思います。もちろん一定数の票は集めるでしょう。それでも小池さんにはかなわないと思います。
そもそも蓮舫氏は批判するのは得意ですが自分で何かやった経験は少ないと思います。東京都はGDPではインドネシアに次ぐ世界17位の経済規模があります。そのトップ、しかも施政において国とは比べ物にならないほど自由度が大きいのです。つまり、都知事が一国の大統領並みの力を持つという意味であり、都民は人気投票で判断するべきではないでしょう。
さて、メディアを賑わす話題に自民党の「じ」の字もないというのも時代の変化ともいえるのでしょう。日経とテレ東の世論調査で次の衆議院選で投票したい政党の調査をこの週末に行いました。その結果に私は注目しています。それは報道では指摘していないのですが、国民意識の分散化です。
世論調査の結果、自民は4月に比べて4ポイント下落の24%、立憲も2ポイント下落の16%、一方、増やしたのが4ポイント増で13%となった維新をはじめとするそれ以外の全ての野党です。泡沫政党の社民党ですら1ポイントちゃんと増やしているのです。これは何を意味しているのでしょうか?
国民がそれぞれがおかれている立場を考え、主義主張をきちんと考えるようになったのではないかと思うのです。かつては政党政治で中身は何でもよいので〇〇党を支持しておけ、と頭ごなしに決められており、それに従う人が多かったのにそれぞれの立ち位置を考え、自分の一票の価値を考えるようになった、そんな風に感じるのです。
わかりやすい例えとしてヒットする歌謡曲があると思うのです。かつてはテレビラジオで一押しをガンガン流しました。もちろん音楽業界の政治的な背景がそこにあるわけですが、国民に一種の洗脳をするわけです。SMAPや嵐にAKBを。ところが音楽番組が減り、好みの音楽が分裂化すると国民的ヒットは激減し、紅白歌合戦を見ても誰だかさっぱりわからない、そんな世界になりました。
政治も同じで自民党と社会党とか、民主党といった昔の名前から「へぇ、そんな政党があるの?」という時代になったわけです。そんな中、壊れかけた自民党で岸田さんは良く踏ん張っているとは思いますが、どこかで自民党の構造的改革をしないと存在感が薄まるのは目に見えています。
かつて自民党が割れたのはロッキード事件、リクルート事件で暗たんな頃だった1991年頃に自民内部で改革の声が出るものの宮澤喜一は否定的でした。そこに飛び出した東京佐川急便事件に絡み、金丸信党副総裁が逮捕されたことで頂点に達したのがきっかけでした。
今の裏金事件とはレベルが違います。そこで自民が分裂するも結局うまくいかなかったという歴史から「自民は分裂しないさ。だってあの時ダメだったじゃない」という説明になるのです。ですが、あの時と今は全然違うのです。SMAPも嵐もAKBも元に戻ることはなく、過去の産物になったのです。
そう、今の時代は過去にしがみつかないのです。だからこそ、腐った部分とまだ鮮度が残っている部分は切り分けなくてはいけないのです。
かといって小沢一郎のように飛び出す自民党幹部ももういないのでしょう。だとすれば自民は全く持ってダメで着実に存在感を失っていくことになります。自民党が候補者を出さない大型選挙をいつまで続ける気なのでしょうか?政治家や政治評論家も好きなことだけを言っているけれどほとんど外しまくり、それでもしれーっとしていること自体も問題だと思います。
日本の政治勢力地図は変わるとみています。そして政党が増え、誰も単独で主導権を取れない政党ばかりで大連立を組んではうまくいかない、そんな政治が今、再びやってきてしまいます。それとも自民党が石原さんのような文鎮として機能させることができるのか、極めて重大なところに差し掛かっているといってよいでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月28日の記事より転載させていただきました。