決戦で見たもの、これからの自民党:石破政権の行方は「サプライズいっぱい」

昨日の自民党総裁選の結果は思うところがいろいろあります。また世の中では様々なうわさや想像が先走っているようです。今日は何はさておき選挙結果の話だと思いますので全部選挙関連の話題の特別編でお送りします。また、いつもの金融市場のコラムは今日は一番最後に回し、日経平均と円の行方について考えてみたいと思います。

では今週のつぶやき、特別編をお送りいたします。

9人論争は意味があったのか?

総裁選としては最長期間での選挙戦で9人の候補者の論戦は皆さんが窮屈そうに座り発言する中、途中から脱落感があった方が複数いらっしゃいました。例えば上川氏は二階氏に最後のお願いに行き、出てきたところで記者につかまるもむっとした態度に「気持ちに余裕ゼロ、この方は人格的にアウトだな」と思いました。アメリカ大統領選のように途中で棄権する勇気は誰もなかったのでしょうか?たぶん、自民党に選挙戦略がなく、岸田氏が「出たい方はどうぞ」というシグナルを送ったことが様々な意味での番狂わせも引き起こしたと思います。

私は投票をずっと見ていたのですが、1回目の投票結果をみてのけぞりました。加藤勝信氏の議員票が16票しかないのです。明らかに5名の造反が出ています。ということは推薦人20名が担保するものは何もないではないかと思うのです。何のための推薦人探しだったのでしょうか?ルールの見直しが必要です。また、議員票プラス本人分の21票が基準だとすれば河野氏は1票、上川氏は2票しか上乗せできなかったのは情けないと思います。党員票も小林、茂木、上川、河野、加藤各氏が20票以下であり、本来期待すべく党員からの支持が薄かったことはご本人たちが一番堪えているのではないかと思います。

論争は見る側からすると3人以上になるとわかりにくいのではないでしょうか?ましてや一般の方にとって9名が各々好きなことを述べる、それを連日繰り返すと最後、訳わかめになり、甲乙つけにくくなります。かつて自動車広告でわが社の車はライバル車に比べてこれとこれが優れているという表を示していたことがあります。素人目にはそれこそ〇☓△ぐらいの超単純化した比較表をベースに点数化した方がゲーム感覚というか、見える化で面白かったかもしれませんね。

決戦で見たもの、これからの自民党

決戦の前に石破、高市氏の順に最後の5分のスピーチがありました。実は私はこれを見て「石破氏で決まりだな」と思ったのです。それぐらい石破氏は聞き手を引き込み、安定したスピーチだったと思います。言葉ひとつ一つに迫力があり、信念があり、よどみなく、日本を守るということを訴えたと思います。一方、高市氏は壇上に上がった際の「礼(おじぎ)」がなっていませんでした。小学生がチョンと頭を下げる感じで風格感なし。そして石破氏の上手なスピーチの後だったこともあり、平凡で薄っぺらな印象に留まり、挙句の果てに制限時間を1分近くオーバーしてしまいました。議員らの判断がこのスピーチで左右されたとは思いませんが、一定のインパクトはあったと思います。

さて、石破氏は早期解散と言っています。日程的にアメリカ大統領選の前に決着をつけたいと考えているかもしれません。個人的には100日のハネムーンと国会論戦を経てからでも良いと思いますが、別の考え方として党内ベクトルが不穏になる前に選挙を終えてしまうという石破氏的戦略はありえます。時間が経てば党内の保守派からは一定の失望感が漂い、閉塞感すら生まれるとみています。裏金問題で自民党再生を謳っていたのに別の難問を抱えたような気がします。

岸田氏就任の時「長くなる」で予想が当たった私が考えた石破政権の行方は「サプライズいっぱい!」だと思います。最大の注目点は野田佳彦氏とあまりにも似ているのがどう影響するかであります。お2人とも庶民派を装っていますが、実際は威風堂々の構え。政策的にはかなり近いものがあります。私はいつか野田氏と大連合を組むのではないかという気すらするのです。その場合、国民民主なんて押しつぶされてしまう勢いになるでしょう。一方、自民は党内が割れそうです。保守派が分離して新党立ち上げの可能性の芽は現実のものになるとみています。どっちが先かわからない「卵とにわとり(=与野党大連立と自民の分裂)」の話はあり得ると思います。

石破茂氏インスタグラムより

市場は過剰反応

日経平均先物は2000円強下げており、円は4円ぐらい高くなっています。これは一回目の投票で高市氏が1位になったことで株式市場で安ど感がでて日経平均が900円も上げたことの反動であります。その前日も1000円以上上げているので2000円下がっても高市祭りが中止になった程度でショックというほどではないとみています。また、円についてもそもそもの動きに戻っただけです。私はドル円は140円が一つの壁だと以前述べたと思います。ここを明白に超えてくるかといえば結構頑強な壁で、まずは石破氏の手腕を見ようということになると思います。

一部論客は消費税が上がるといっていますが、石破氏はそれはないと明言しています。ただし、氏は法人税と所得税には上げ余地があるとしています。個人的には法人税は上げられても所得税増税は賃上げ効果を相殺するのでやるべきではないと思います。もしもそれをするならいくら石破氏が財政規律派と言えども自民党は本当に支持されなくなります。決戦での国会議員票は政策的に真逆の高市氏に16票差でした。つまり8人差です。こんな僅差では国民に不人気な増税案が党内で通るわけがないとみています。むしろ景気回復による税収増があるので茂木氏の主張のように財源は別腹で生み出せると思います。

石破氏はバイデン氏のようないぶし銀のベテランタイプです。また熟考し、議論するタイプですから独断専行にはならないはずです。日本経済全般を見ると決して悪くないわけでサントリーは既に来年のベア引上げを発表したぐらいです。政治的な反応は往々にして行き過ぎるので週末をはさみ少し頭を冷やしたうえで市場との対話をした方がよいでしょう。株価は月曜日寄り付きは一旦下げますが、回復途上となり、基本的には上に向かうとみます。以前から申し上げているように日経平均は改めて4万円を目指すとみています。週明けは銀行株が跳ねそうです。また為替は長期的にドル指数が安くなっても円がそのままシーソーのような関係にならない気もします。日本のファンダメンタルズは円が一方的に買われるような話ではないと思います。よって慌てないことが大事でしょう。

後記
今回の選挙で国民の皆さんの関心も相当高かったと思います。特に「高市ブーム」は驚くべき盛り上がりでまるで支持者に高市さんの魂が乗り移ったのではないかと思いたくなるほど熱いものを感じました。もしかすると安倍元首相のブラッドが蘇ることを夢見たのかもしれません。でも申し訳ないですが、高市さんは仮に首相になれば組閣で苦労したと思います。特に女性議員を閣僚に入れられたのか、私には疑問が残ります。これを一つの糧としてまた次回、頑張ってもらいたいと思います。健闘を称えます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年9月28日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。