高市早苗の敗因のひとつは最終演説での大失敗

決選投票で演説する高市早苗氏
NHKより

自民党総裁選挙で石破茂元幹事長が選出されたので、保守派は「自民党も終わりだ」とか「安倍路線が否定された」とか言っているが、それは言い過ぎだ。

なにしろ、決選投票で岸田文雄首相、菅義偉元首相など安倍政権中枢の人々が石破支持に回った。この人たちが安倍路線の反対者で、高市氏の推薦人になった超保守派だけが安倍路線の継承者であるというのはさすがに無理がある。

逆に言えば、高市氏は穏健保守と言うべき人たちから、安倍路線継承者として認められなかったと言うべきであろう。

安倍氏は保守的なイデオロギーをもっていたが、自公連立に誰よりも高い評価を与え、対中外交も重視して習近平を国賓として招待し、女性の権利拡大で実績を上げたことを米国のリベラル派から評価され、オバマ政権ともケネディ大使にも助けられて上手に付き合った。経済政策も二度も消費税を上げたし、アベノミクスにしても市場の信頼を失うような極端なことはしなかった。

高市氏は、歴史認識については安倍氏の戦後70年談話に従うことを明確にすべきだった。

安倍氏が首相退任後に、派閥の長としてやや保守色が強化された言動をしていたとしても、それはコアな支持勢力として彼らを位置づけていただけで、再登板したら前回時と同じように目配りの良い政治をしただろう。

高市氏の先週までの戦いは、まことに見事だった。応援団が保守色が強すぎ、創価学会と激しく対し対立してきた人や、有力安倍派議員の落選運動などする人もいるのは気になったが。だが一般党員・投票での躍進には、有効でトランプ旋風に似た風を起こすことに成功した。

さらに、東京都知事選挙で石丸旋風を演出して「選挙の神様」と言われた藤川晋之介氏の選対入りもネットを起点とする風を起こした。

ただ、9月24日に郵便投票が事実上、締め切られてからは、岸田・菅や小林鷹之氏を支持した勢力など、中道寄りの議員に安心感を与えるために、君子豹変して支持を訴えるべきだった。

保守色の強い言動が、国際的に摩擦を引き起こさないか、朝日新聞などリベラル系メディアの執拗な批判の標的にならないか、市場の信頼を損ねるような発言に封印できるかなど不安は残ったままだった。

とくに、金利引き上げを馬鹿呼ばわりした発言はよろしくかなかった。こういうトンデモ発言しては、市場の信頼は得られない。推薦人に13人もの裏金議員がいるのもよくなかった。また、高市早苗さんは、決選投票を前にした演説で痛恨の失敗をした。

高市早苗さんは岸田さんへの御礼とか平板に終始し、公明党との連立政権成立から25年たって成果を上げたと言ったあたりで時間超過のメモを入れられ、「これで終了です」とつぶやき、画面を見てなかったので、一瞬、自公連立解消宣言かと驚いたが、「これからも」とつないだものの、公明党との協力についてのまとめの述語がないまま、そのまま、全体の結びの言葉になってしまった。

今後も自公連立でしっかり進めていくという趣旨を言おうとしたらしいのだが、分かりにくい終わり方になって、一瞬どういう趣旨なのだろうかと戸惑った。

初の女性総理を実現することの意義とか高揚感もなく大失敗の演説だった。