維新も国民民主も「石破ポピュリズム」を後追いするのか

石破首相の所信表明演説は、無残なものだった。総裁選で彼が主張していた筋論はきれいさっぱりなくなり、選挙目当ての老人ポピュリズムのオンパレードだ。

教育無償化は納税者にただ乗りする「学費の税金化」

ではそれに対する野党はどうか。いつもなら野党の公約なんてどうでもいいが、今回は石破内閣がグダグダなので、自公で過半数を割る可能性も出てきた。その場合は維新か国民民主が連立の相手になり、彼らの政策が反映される可能性がある。

ところが彼らの公約は、旧態依然のポピュリズムだ。

この「教育無償化」は学費の税金化であり、教育を社会主義化して保護者が納税者にただ乗りする制度だ。これは前原グループ(教育無償化を実現する会)を合併したお家の事情だろうが、「税金を集めて配るのではなく集めない」という維新の哲学に反する。

社会保険料も消費税も減税して財源はどうするのか

これについては国民民主党の玉木雄一郎氏が「教育の提供者側ではなく需要者側を支援すべきだ」と批判しているが、国民の公約も「消費税5%」に減税する露骨なポピュリズムである。

維新の公約も、くわしく見ると「消費税を8%とし、軽減税率制度を廃止します」と書かれている。彼らの共通点は社会保険料の軽減だが、その財源を明示しないかぎり絵空事だ。特に問題なのは、国民も強調している老人医療への「支援金」などの毎年10兆円の保険料の超過負担である。これが保険料の4割をしめる。

それをなくす財源として彼らが想定しているのは、後期高齢者の9割引医療をやめることだ。維新は「一律3割負担」を打ち出しているが、これだけではたかだか5兆円しか財源が出ない。残り5兆円はどうするのか。国民は「公費投入」と書いているが、その財源はどこから出てくるのか。

「教育国債」は財源とはいえない。それを最終的に償還する財源は何か。それは消費税しかない。これは国民負担は同じで、現役世代に片寄った負担を高齢者にも分担させる点で望ましい。ところが維新は8%、国民は5%に減税するという。これでは財源は10兆円減ってしまう。

社会保険料も消費税も減税する公約は、論理的に成り立たない。こんな矛盾した約束をしても、石破首相のように一夜にして撤回し、恥をかくだけだ。もし自民党と連立協議をすることになれば社会保障が鍵になるので、こんな矛盾した公約は撤回し、保険料軽減の財源を明示すべきだ。