中高年が年下と付き合う時の3つのルール

黒坂岳央です。

最近、中高年世代の人から「人間関係で関わるなら年下世代がいい」という意見をよく見る。この意見自体は正しい。若い世代は世の中のトレンドに強く、テクノロジーやビジネス、イノベーション分野にも明るく何より前向きでパワーをもらえる。自分も子供や夢を追う20代、30代から多くのことを学ばせてもらうことが多い。明らかにメリットがあるのだ。

しかし、自分側にメリットがあるからと、下心満載で年下世代に近づいても鬱陶しいだけである。加えて「そんな姿勢では嫌われてしまうのでは?」という傲慢な態度でアプローチする中高年も少なくない。

彼らと付き合う時にわきまえるべき絶対マナーというかルールについて、持論を述べたい。尚、以下はすべて傾向や一般論の話であり、個人差についての話ではない点に留意いただきたい。

clumpner/iStock

自分語りをしない

中高年は人生経験が豊富であるため、若者世代の考えや生き方が「若さゆえの青さ」に見えてしまうことがある。そのため、「そんなんじゃだめだ。自分が若い頃は…」とすぐ自分の話にすり替え、相手が嫌な顔をしていることに気づかず自分語りをしてしまいがちだ。

しかし、個別ではなく最大公約数的にいえば若い世代が賢く、生存戦略に優れていることは論理的に導くことができる。理由はシンプル、我々中高年の持つ過去の豊富な人生経験はむしろ、これからの新しい時代の足かせにしかならないことも多いためだ。もちろん、すべてがネガティブとは言わないが、昭和や平成で有効だった生存戦略は、むしろミスリードする先入観になり得る。そのため、リスキリングで真っ先にやるべきは、間違った古い価値観のアンラーニングである。

一方、若い世代は生まれた時から先端テクノロジーに当たり前に触れ、令和の時代にマッチした人生戦略を考える。当然、個人差は大きいし、強さが逆転する例はあるが、あくまで世代間で水平比較をしたら古い世代に勝ち目はないといえる。人生の先輩としてのアドバイスなど求められていないのだ。

彼らに古い価値観を語って反論されないからといい気になってべらべら一方的に話し続けるべきではない。多くの場合、彼らが反論しないのは正しいからではなく、対応するだけ時間のムダだと呆れているからだ。

お金を出す

「若い世代から学ばせてもらいたい」そういいながらもしっかり割り勘、これは社会的なマナーとして通すことは難しいと感じる。

国の年代別の貯蓄額を見ればわかるが、統計的に中高年世代の方がお金を持っている。個別の話を持ってこられるとそれは世代間の議論ではなくなり、収集がつかなくなるが、あくまで傾向と統計ではそうだということだ。

加えて年代ごとに同じお金の価値は天地ほど差がある。同じお金でも、世代間で感じられる価値は全く違う。

そう考えると、年上の側にメリットがある場で「支払いは割り勘で」というのは違和感がある。法的な間違いではないが、社会慣習的に正しいとは言えない。仮に会社で一回りほど年の離れた上司に呼ばれ、連れて行かれた食事で「割り勘で」となれば誰に取ってもかなり違和感があるはずだ。

プライドを捨てる

日本では「年上は敬え」という文化があるので、年下に頭を下げて教えを請うというのはプライドが許さないという人も少なくない。

しかし、本来能力や魅力に年齢は関係ない。自分の場合、昔から学校の先輩・後輩の関係が苦手で「なぜたった1年早く生まれただけで、絶対服従を強いられるのか?」というのが理解できなかった。

だが社会に出てビジネスの場に出れば、年齢は関係ない。仕事は実力がすべてだ。相手が何歳だろうとも自分より優れている部分があるなら、それは全力で称賛し、そこから何らかの学びを得る貪欲な姿勢を持つべきであろう。

プライドを持ったまま他者に触れても、無意識にマウントを取ろうとしても、何一つ学びを得られず、さらに周囲からその心理的余裕の無さを見透かされてバカにされるだけだ。しょうもないプライドなどさっさと捨ててしまい、素直に教えを請うのが最適解である。

人間は相手が知らないことを自分が教える行為に対し、自己愛が満たされるという性質を持つ。もちろん、伝え方には最大限の配慮が必要という前提ではあるものの、自分は年下と接する時、「わからないから教えて」ということを素直に伝えるようにしている。これまでそれで嫌な顔をされた記憶はなく、丁寧にわかりやすく教えてくれる。「教えてくれてありがとう」といえば先方の自己愛が満たされるのでWin-Winである。

本稿では年下との付き合い方について論じたが、本来こうした話に相手の年齢に関係ない。誰が相手でも一方的な自分語りを延々しない方が良いし、メリットを享受する側が食事代くらい出した方が良いし、面倒なプライドなんて出さない方が良いのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。