ボスには絶対服従が当たり前であることを日本人は何も知らない

私の近著『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、日本の人々が知らないことに、北米や欧州では上司には服従するのが当たり前というお約束があります。

実態を知らない日本の人々は「欧米」では年齢に関係なく誰もがはっきりと意見を受けてフランクな関係を上司や周りとも気づいていると思い込んでいます。

ところがこれは大きな間違いです。

Cristina Canton/iStock

基本的にこれらの地域では人事の仕組みが日本とは異なっています。

日本ではある程度の規模の会社や官公庁では人事部が大変な力を持っていて、新入社員の配属やすでに働いている人の移動などに対して決定権を持っていることが少なくありません。

誰かを採用したり、移動させたりする場合は管理職が人事部にお伺いを立てて、OKが出なければアクションに移すことができません。

ところが北米や欧州というのは比較的大きな組織でも要因管理の仕組みが全く異なっています。

基本的に各チームや部署が小さな会社のようになっているので、管理職や幹部の人事に対する権力が日本よりも大変大きいのです。これは大学や官公庁でもほぼ同じです。欧州でも東寄りのところや官公庁のところだと人事の仕組みが日本のように中央集権的になっていることもあり人事部は強いこともありますが、多くの職場ではそうなっていません。

そうなると、誰を採用して誰をクビにして誰を移動させるか、ということを決めるのはその部署のボスになります。大学では研究室を統括する教授です。彼らは自分の命運を握っているわけですから反論したり気を害したりするようなことを言えるわけがありません。

しかも非常に厳しいのが日本の企業のようにダメだったら移動して何とかするということはしないのです。パフォーマンスが低い人間は他の部署でもチームでも受け入れを拒否されることがほとんどなので、よほど寛容で情がある他の部署が見つからない限りはクビになってしまいます。

ですから意外とこれらの国では日本の企業のような問題社員はすぐにクビになってしまいますし、上司に楯突いたり同僚と議論ばかりしているような「困ったちゃん」は失業してしまうのです。欧州大陸で解雇規制が厳しい国の場合は閉職に回されてキャリア終了です。

では上司の言っていることが間違っていたり仕事に問題がある場合はどうしたらよいかと言うと、なんとか遠回しにその上司のご機嫌を取りつつ違う提案をしてみたり、違う部署や上の人から何か言ってもらうように根回しをしなければなりません。

しかしその人の気を悪くするようなことを言うのは他の人も嫌がるので非常に上手い根回しが必要です。はっきり言って日本の根回しよりも難易度が何倍も高いです。

 

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