セブンの業績不振は「底上げ弁当」が原因ではない

黒坂岳央です。

コンビニエンスストア大手3社の2024年8月中間連結決算が話題になっている。ローソン、ファミリーマートとは対象的にセブン&アイ・ホールディングスの業績不振であることが報道され、それに対してここぞとばかりにセブンたたきのコメントが殺到しているのだ。

セブンイレブン Wikipediaより

業績不振の主要因

コメントの内容は「セブンが底上げ弁当で騙したから客離れが起きた」「庶民の懐事情を理解していない高値設定が原因」といったものが踊り並んで半分炎上のようになっている。しかし、本当だろうか?

同社の決算書を見ると、営業収益は4,623億円(国内)となっており、ファミリーマートが2,575億円、ローソンが2,054億円なので依然として同業他社の営業収益を圧倒しているように見える。とても「底上げ弁当や高すぎるから客離れを起こした状況」が起きているようには見えない。

同社はこの業績不振を2つの原因として取り上げている。1つ目は海外コンビニ事業の低迷だ。特に北米のセブンイレブン事業が苦戦しており、収益の減少が全体の業績に大きく影響した。2つ目は国内事業の再編と損失計上である。イトーヨーカドーのネットスーパー事業の撤退に伴い、関連会社の事業損失が計上。これがさらなる業績の下押し要因となっているという。

決算書を見てみると、国内コンビニの営業収益は4,623億円であるのに対し、海外コンビニは46,125億円と「10倍近い」。その海外業績の低迷がインパクトになったというのが真相である。つまり、消費者の支持を得られなかったので国内コンビニの業績不振というコメントは正しくないといえる。

事実と願望をわけて考えよう

この問題に限った話ではないが、事実と願望はわけて思考する必要がある。確かにセブンイレブンの弁当は消費者をミスリードさせるようなデザインになっている商品は存在するのは知っている。また、値付けも比較的高めで10年前と比べるとシュリンクフレーションを起こしていると感じることもある。

しかし、競合他社と圧倒的に差をつけており、依然として「コンビニの王者」である事実は決算書から明らかである。こうした議論の場合、「印象」ではなく「数字」で論じるべきだろう。

自分はセブンの肩を持つ訳では無いが、個人的に高価格品についていえば「あり」だと思っている。ここからは統計データなどによらない、単なる個人的な見解に過ぎないがどのコンビニやスーパーに比べても、セブンの金のシリーズはコンビニ商品としては十分すぎるほどおいしいと感じる。確かに値は張る。だが、その分味がおいしければ問題ないと思うのだ。

昨今、「安くて良いもの」をコスパが良いと支持する風潮があると感じるが、企業もビジネスで利益を追求する団体に過ぎないため、「高いが良いもの」は商品価値として成立する。あくまでそれが企業全体で見た場合の利益効率がいいか悪いかの差に過ぎない。その先のリスクテイクは企業がする話だ。

セブンについては、一部から否定的な意見があろうとも未だ業界ダントツ1位という事実が、マーケットからの正当な評価と捉えるべきだろう。コンビニは特定の顧客が大量買いをして売上を支えるビジネス構造にはなっていないため、商品価値は他の商品サービス以上に売上に素直に現れる。真に多数から支持が得られなければシンプルに売れないだけだからだ。

このセブン叩きについては違和感を覚える。確かにボリューム満点と錯覚して実は底上げ弁当だった時の騙された感が腹立たしいという気持ちはわからなくもない。しかし、全く無関係の記事にその鬱憤をぶつけてしまう行動はあまり生産的とは言えない。セブンの勝敗はシンプルに売上で決まる、良くも悪くも企業がマーケットで生き残るというのはそういうメカニズムなのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。