黒坂岳央です。
筆者はフルーツの通信販売ビジネスを手掛けていることから、フルーツの生産者から「収穫する予定だった果物を根こそぎ取られてしまった」という悲しい話を聞くことがある。
古くからフルーツの窃盗事件は起きており、近所の老人が自転車で乗り付けて自分で食べるためのメロンを盗むといったものから、組織ぐるみで行うものまで様々である。
昨今、闇バイトが日本を震撼させているが、その裏で静かに起きているものが「闇農業バイト」である。
SNSで実行犯を募集
闇バイトはSNSのDMを中心にリクルーティングされているが、闇農業バイトも実行犯を募るSNSコミュニティが存在する。
そのSNSでは来日した外国人技能実習生へ、違法な銀行口座や在留カードなどの違法取引が行われているとされ、借金苦に困った外国人が組織ぐるみで農作物の犯行に及んでいると考えられる。
なぜ組織ぐるみでの犯行だと判断できるのか?その根拠は複数存在する。まず、一年一作の果実を収穫寸前で奪われるケースが多いのがその一つだ。犯行に多くはフルーツの生産者でなければ知り得ない情報(広い畑の中でどのエリアが収穫時期か?といったタイミングなど)を的確に捉えて及んでいる。
加えて高値で取引できるフルーツをピンポイントで選んでいる(尚、近年特に狙われやすいフルーツは農林水産省のサイトに掲載されているので参考にされたい)。さらに、定期パトロールの目をかいくぐって窃盗が出来ており、イチ個人の犯行とは考えにくい。
また、出口戦略もしっかりと用意されている。筆者は昨年、東京で違法フルーツ販売車に突撃インタビューした。さらに数年前から複数のテレビ番組で窃盗した果物をフリマアプリに出店して売りさばく闇を解説させてもらった(過去の番組実績はこちら)。
かつて、窃盗したフルーツの売り先は市場だった。市場には様々な生産者によってフルーツや野菜が持ち込まれるが、それがフリマアプリになり、そして最近では移動販売車で売られている。
フルーツはエレクトロニクス製品と違ってトレーサビリティが困難で、「どこから来たかわからない販路」を使えば盗品でも売れてしまう。これらは法の目をかいくぐって検挙に繋がらない我が国の法を理解した手口であり、単独犯とは考えにくい。
闇農業バイトの3つの不都合な真実
金目の物を強奪するという点では、闇バイトと共通点を持つ闇農業バイトだが不都合な真実がいくつも存在する。
まずは他の窃盗と比べて捕まりにくいという点だ。警察庁 犯罪統計資料によると、令和4年は認知件数2,194件に対して検挙件数は1,081件、検挙率は49.3%と圧倒的に低い。法務省の発表によると、我が国の強盗の検挙率は安定して高い水準であり、令和元年は87.8%にも登る。その数値と比較すると農作物の窃盗は捕まりにくいといえる。しかも一連の犯行は在留資格を失ったような立場の弱い外国人でも簡単に理解でき、実行できる。
次に農業の生産者は相対的に高齢化しており、多くは高齢者である。若い外国人がその気になれば、簡単に逃げおおせるし暴力でねじ伏せるようなことも出来てしまう。今のところ、闇バイトのように生命を奪われる痛ましい事件は起きていないが、今後はわからない。
最後に捕まらずに売り抜ける事ができてしまうという点だ。バイクや自動車の窃盗においては、盗まれた本人がフリマサイトに出品されているのを発見して通報、逮捕に至るケースもある。だが、上述した通りフルーツはトラッキングが不可能である。これは現行犯以外の検挙がほぼ不可能であることを意味する。実際、フリマアプリや移動販売車で窃盗フルーツを販売した罪で逮捕されているケースを筆者は知らない。
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闇バイトだけでなく、闇農業バイトが起きている。「窃盗はコスパのいいバイト」といった誤った認識をさせないためにも高い検挙率の維持、そして盗ませない施策が必要だ。
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