S&P 500は長らく懸念されてきた大統領選を通過して棒上げとなった。
月曜はトランプ・トレードの手じまいとなり指数も下げたが、火曜は手じまいを続けつつ指数は反発した。そして「ハリスベットの方がオッズがよい」時間帯は週明けから開票開始の瞬間までで終わってしまい、水曜アジア時間午後にあっさりトランプの勝利が決まってしまった。
上下院共和党を含めて概ねレッドスイープになるだろうということでアジア時間から長期金利上昇・株式指数先物高となった。現物が始まって「とにかく大統領選を通過した」で飛び付いても一応間に合った。その後は小型株や金融株を中心にリスクオン・トレードの資金が殺到した。
正確には大統領選前と通過後のVIXやMOVEは同じものではないのだが、とにかく大統領選を通過してVIXとMOVEは暴落した。大統領選前から今一つ役に立っていない過剰ヘッジの解消が続いた。
長期金利は著しく上昇しており、同じように長期金利が上昇したとはいえ長期金利の絶対水準が低かった2016年のトランプ・ラリーを再現するのは無理があるのではないかという声もあったが、そうならなかったのはクレジットスプレッドの縮小がそれをオフセットしたからである。水木だけで7bp縮小したという。そうこうしているうちにFOMCを通過して長期金利も開票前の水準まで戻ってきた。
前回の記事でトランプが当選すれば2016年の逆になるのではないかと想像していたのは株式投資にとって全く有害な考え方であったが、長期金利に限ってはそうなっている。FOMCは既に長期金利がお行儀よく上がっていたのもあり最近の堅調な経済指標に対してのリアクションはなかった。
GS CTAは11月前半にじんわりと売りに回った後に後半の間に復元が続きそうな計算になっている。
インプライドVolが低下したため様々な機械の買い出動をストラテジスト達が予想した。水曜の急騰を受けてVolコントロールが買い戻しに動くとの観測もあったのだが、我々がこれまで学んできたように、他の機械勢はともかくVolコントロールはリアライズドVolの方をインプットしており、1日2%を超える上昇は上昇であっても売却方向に働くのが正しいと思われる。
リアライズドVolは水曜のマークが消えるまで高めに推移する。実際、S&P 500は連日陽線で引けているが、引け前は必ずしも強くない。ただ他の戦略の買い戻しがあまりにも激しいので、Volコントロール単体を心配するほどではないだろう。
指数が上がり続けたのが全てであるが、決算への反応も全体的によくなっている。
EPSコンセンサスはロールアップ込みで横ばいから少しずつ上向きになっている。
バリュエーションはPERで見ると相当高い。リスクフリー金利が高く、EPSが伸びているのか伸びていないのか分からない環境を考えると更に高い。
選挙を通過してNAAIMはさすがに少し楽観化した。とはいえ警戒するほど水準は高くないが、一方GSセンチメントは一気に著しく楽観化している。シーズナリティは年末にかけてかつてないほど改善する。自社株買いブラックアウトも概ね明けた。
テクニカル。棒上げなので手掛かりは少ない。5670はブレイクされず明確に週足サポートとなったが今更である。大統領選のギャップ上限は5860にあり、何かの拍子でこの水準を割り込んで窓埋めに入ると「大統領選後の上げを全戻し=5670を再び伺うかどうか」という切り口になってしまう。
閣僚指名や保護貿易関連のヘッドラインでリスクオフになる場面も考えられるが、先週の貿易相手国の株式指数が米国対比で概ね不調であった傾向が示唆するように、S&P 500にとっては最終的には対岸の火事となる可能性が高く、年末までの間は就任前ということもあり押し目で終わる可能性の方が高いと思われる。
上値余地の方は、JHEQXカラーのコール売りが6055にあることが分かっており、エクスパイアが年末と遠いのでガンマの影響は大きくない可能性もあるが、6055を超えた水準では重くなる可能性が考えられる。
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編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2024年11月10日の記事を転載させていただきました。